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「離婚しよう」
結婚して三年。瀬戸晋佑は相変わらず言葉を惜しむ男で、その冷ややかな一言に、ひとかけらの情もなかった。
奏絵は彼の背後に立ち、すらりとした背中を見つめた。窓ガラスに映る険しく無情な横顔を見て、胸の奥が底まで冷え込んでいく。
手は体の脇で音もなく握りしめられ、細かく震えていた。
ずっと恐れていた言葉が、とうとう口にされた。
晋佑が振り返る。輪郭のくっきりした端正な顔立ちは、三年の毎日に見慣れたはずなのに、なお胸を高鳴らせる。
「……離れたくないと言ったら?」
喉を通すのもやっとの声。瞳には今にも崩れそうな光が宿り、それでもわずかな望みを含んでいた。
晋佑の眉間がわずかに寄る。素顔の奏絵を見つめ、その赤くなった目に視線を留め、さらに眉をひそめた。
濃い化粧映えする美人ではないが、雪のように白く澄んだ肌に、柔らかな雰囲気を纏った顔立ちは、素朴でいて人を惹きつける。
澄んだ大きな瞳に必死の願いを宿し、右目の下の小さな泪ぼくろが儚げに光る。まっすぐ伸びた黒髪が耳元にかかり、触れればほどけてしまいそうなほど柔らかだった。
だが晋佑の目に映るのは、ただ柔らかく、そして鈍い女。
妻として非の打ちどころはない――ただ、愛してはいなかった。
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