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森林の水っぽい空気がわたしの頬をさする。それは穏やかで優しくもあり、冷たくもあった。
空っぽの底の深い桶を左手にぶら下げたわたしは、腐食した落ち葉の堆積した地面を踏みしめながら、明るい木漏れ日の中を歩いていった。
絶え間なく聴こえてくる鳥のさえずりが、人里を離れた森の中の情景に染み入って来る。わたしはそんな中に踏み入っている自分が、少しだけ申し訳ないような気持ちになっていた。
苔むした石の合間から、こぽこぽと湧き出る水。わたしはその澄んだせせらぎの水源の傍に桶を置き、膝を折る。それから、桶の中に入れていた柄杓を使って湧水を汲み取り、桶に水を入れた。
水いっぱいの桶。それに柄杓を差し込み、両手で持ち上げた。ずしり、とした重みが、わたしの腕から腰に掛けて圧し掛かってくるようであったが、わたしは踏ん張って耐え、帰路に就いた。
わたしが戻ると、今日の興業の準備を始めている一座の仲間が次々に声をかけてくれた。わたしは頬を緩ませ、皆に笑顔で受け応えをする。
わたしは舞台用の小道具が積まれている物置の傍に桶を置いた。
ふう、と息を吐く。ここから森の湧水までそれなりの距離がある。まだ仕事に不慣れなわたしにとっては少し堪えた。
「ヨモキ、おはよう。朝早くからご苦労さん」
背後からの声に振り返る。
長身で着物姿の女性。烏の濡れ羽色の長髪。同性のわたしから見ても目を引く美麗な相貌が、朝日を浴びて一層眩しく映った。
副団長のサクヤさんだ。
「おはようございます、サクヤさん」
サクヤさんは優しく微笑むと、わたしの肩を軽く叩いた。
「うん、元気があって宜しい」
それからサクヤさんは真顔になり、声を潜めながら言った。
「アキゴがあなたのこと、呼んでいたよ。朝の仕事はもういいから、行ってきなさい」
「え……団長が?」
「シャモギのこと……らしいけどね」
シャモギ―名前を聞いて、わたしは一瞬ドキリとなった。