舞台の女神さま!
作者石橋崇行
ジャンル恋愛
舞台の女神さま!
薄暗い教室の半分くらいの広さの部室の電気をつけて中へゆっくりと入ると……
「あずっち。お疲れ!」
「う、うわあ!」
突然背中に衝撃を覚えた。なんと部長で2年の塚本(つかもと)亜(あ)希(き)先輩が笑顔で飛びついてきたんだ。正直恥ずかしい……
「あずっち。今日も演技マジ最高だったよ。流石経験者はすごいわ。羨ましいなあ」
「亜希先輩恥ずかしいです」
「ごめんごめん。それより聞いて聞いて。我が演劇部の予算が今月から2倍になったんだよ。あの悪女城ケ崎も私たちの実力を理解できたんだわ」
亜希先輩は満面の笑みでⅤサインをしながら誇らしげに語った。正直その裏ではボクが色々と苦労させられたんだけどね……
亜希先輩は見た目も性格も弾けているんだけど結構頼りになって行動力が凄いんだよな。それに結構おしゃれで小柄だし可愛いんだよね。この人のお陰で演劇部が復活できたんだからな。
まあ、生徒会と亜希先輩は犬猿の仲だったから今まで冷遇されていたのは無理もない。と言うか良く廃部に追い込まれなかったと思う。
この後、皆合流をして後片付けを終えるといつものように亜希先輩の一言で打ち上げに行くことになった。と言ってもいつもカラオケに行って遊ぶだけなんだけどね。
でも皆、とてもいい人ばかりで一緒にいるだけで辛いことも春風に包まれるように消えてしまう。
あっという間に時間は過ぎて時刻も夜9時を廻ったので帰路に就いた。だけど暖かい夢から覚めたようにボクの足取りは重かった。皆はボクを人気女優のように「憧れの人」として見ているが現実は残酷だ。