
弟のアレルギーを治すための特別なレシピが完成し, 私は婚約者である真和のオフィスへ向かった.
しかし, ドアの隙間から聞こえてきたのは, 彼の冷酷な声だった.
「理春との婚約は一時的な措置だ. 陸の事故の件で, 俺を深く信頼しているからな」
弟の事故の犯人は, 彼の妹・心菜. そして真和は, 自身の政治生命のために証拠を隠蔽していたのだ.
妊娠中の私を心菜が海に突き落とし流産させても, 彼は妹を庇い, 私の精神状態を疑った.
愛も, 希望も, お腹の子も, すべてを奪われた. 信じていたすべてが, 彼の政治生命のための道具でしかなかった.
絶望の淵で, 私は彼の金庫から決定的な証拠を見つけ出す. 復讐の炎を胸に, 私は恩師の助けを借りて, 彼らからすべてを奪い返すことを誓った.
第1章
松原理春 POV:
弟の未来をかけたアレルギー対応スイーツの特別なレシピが完成した. この喜びを, まず真和に伝えようと, 私は急いで彼のオフィスへ向かった. 私の心は, 焼き立てのケーキのようにふんわりと膨らんでいた.
真和のオフィスは最上階にあった. 重厚なドアの前まで来て, 私は少し立ち止まった. 興奮が全身を駆け巡り, 軽く息を整える. ドアが少しだけ開いていることに気づいた. 中から真和の声が聞こえてくる.
「…理春との婚約は, あくまで一時的な措置だ. 分かっているだろう, 心菜. 」
その言葉は, 私の耳に鋭利なナイフのように突き刺さった. 私の心臓は, 突然氷で覆われたかのように冷たくなった. 婚約が一時的? どういうことだろう. 私の頭の中は真っ白になった.
「心配するな. あの女は, 馬鹿正直で鈍感だからな. 俺に言われるがまま, 大人しくしているさ. それに, 陸の事故の件で, 俺を深く信頼している. そう簡単に真実にはたどり着けない」
真和の声は, まるで私という存在を嘲笑うかのように響いた. 弟, 陸の事故の真実? その言葉が, 私の思考をかき乱した. 私は彼の言う「あの女」が自分であることに気づき, 全身の血が一瞬で凍り付いたようだった.
「兄さん, 本当に大丈夫なの? 彼女が何か感づいたら…」
心菜の声が, 不安げに響く. 私は息を殺し, 耳を澄ませた. 心菜が, なぜこの話に絡んでいるのだろう. 私の心臓は, 重々しく, そして不規則なリズムで脈打っていた.
「大丈夫だ. あの時, 警察に圧力をかけて, 証拠は全て揉み消した. もちろん, お前が薬物使用中に運転していたことも, 誰も知らない」
真和の声が, 冷酷なまでに落ち着いて響いた. 薬物使用中の運転. その言葉が, 私の脳裏に稲妻のように走った. 陸の事故. 心菜が犯人? そして真和がそれを隠蔽した? 私の体は, 突然重力に逆らえなくなったかのように, 崩れ落ちそうになった.
「それにしても, あの女のレシピ, 本当にすごいね. あんなアレルギー対応のスイーツが作れるなんて. これなら, 私たちの新しいビジネスプラン, 間違いなく成功するわ」
心菜の声は, 喜びと満足に満ちていた. レシピ? 私が陸のために, 何年もかけて開発した, アレルギー対応スイーツの特別なレシピ? それが, どうして心菜の手に? 私の思考は, 完全に停止した. 絶望が, 全身を駆け巡る.
「ああ, もちろん. あのレシピは, お前が事業を拡大するための最高の道具だ. 理春には, しばらく何も知らせずに置く. 彼女が俺の監視下にある限り, 何も問題ない. それに, このレシピが流出すれば, お前が政治家としての地位を守るのに役立つ」
真和は, まるで商談でもするように, 淡々と心菜に話していた. 私の存在は, ただの監視対象. 彼の政治生命と心菜のビジネスプランを守るための, 都合の良い駒. その事実に, 私は吐き気がした. 屈辱が, 私の胃を締め付けた.
「あの女は, 私たちにとって都合の良い道具でしかない. 兄さんの政治生命と私のビジネスのために, 利用できるものは何でも利用するべきよね」
心菜の声は, 私の心に深く, 深く刻み込まれた. 私の心は, まるで壊れたガラスのように, 粉々に砕け散った. 私は, ただ利用されるだけの存在だったのだ.
「ああ, そうだ. それに, あの女の感情なんて, どうでもいい. 俺にとって重要なのは, お前とお前の未来だけだ. お前は俺の唯一の家族だからな」
真和は, 心菜に優しく語りかけた. その言葉の刃は, 私の心臓をえぐり取った. 私が, 彼にとって何でもなかったことを, 私は今, 知った. 彼が私に注いでいた愛情は, 全て偽物だったのだ.
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