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第3章取引成立 (Part
One)
文字数:1350    |    更新日時: 12/08/2021

ダニエルの視点:

「ダニエル! ソフィアに何をしたの? 何を言ったの?」

電話から母の声が聞こえたので俺は目を閉じた。 とんだモーニング・コールだ。

「別に何もしてないよ、母さん――」

「だったら、なぜ取引を破棄されたの? 今朝あの子から電話が来て、取引はしないと言われたのよ!」

「母さん、それは彼女の問題で、俺は関係ないよ。 彼女が中止を決めたなら、それでいいじゃないか――」

「ダニエル・ケリー!」

――なんてこった、またフル・ネームを呼ばれたよ――

「あなたをそんな失礼な男に育てた覚えはないよ!」

「母さん、俺は彼女に何もしなかったと言っただろう!」

「そうかな。 私から彼女に聞いても、昨日あなたたちの間に何があったのか、教えてもらえなかったけれどね、 いいか。ソフィアはとてもいい子なのよ。 そして、あなたとお父さんが望む投資のための唯一の希望なのよ」

「相手なら自分で見つけるさ。 婚約者くらい自分で決めさせてくれよ母さん!」 眉毛をポリポリ掻きながら、ベッドから起き上がって俺は言った。

「分かったわ! 自分で婚約者を見つけてもいいけど、過去の女性のなかから選ぶのはくれぐれもよしなさいよ!」

俺は目を丸くした。

「あの女は一体何なの?あいつとの結婚だなんて。 あんなやつ何とも思わないよ、母さん! そりゃあ彼女はきれいだけど、それ以外は何も無いじゃないか。 ただの普通の女だろう」

「もう少し辛抱なさい。 そのうちあなたも分かるわよ、後にも先にも、あの子みたいな女性には会えないってね」 ダニエル、あの子は特別なのよ」

俺は母の解説に笑った。 「母さんたら、いつ詩人になったんだい?」

「ダニエル・ケリー! 私は真剣なの!」

「分かった、分かった!」 笑いを堪えながら俺は言った。 「でも母さん、頼むよ。時間が欲しいんだ。そしたら婚約者を自分で見つけるから」

「見つからなかったらどうするの?」

「そのときは母さんが推薦した子にするさ」

「いいわ、一週間あげる。じゃあ、始め!」

「ちょっと母さん、それは短すぎる――」

「だめよ! 婚約パーティーまであと2週間半じゃない。 1週間で女の子が見つからなければ、ソフィアと結婚してもらうわよ」

「分かったよ」

「いいわね、じゃあね。 気をつけてね、愛してるわよ」

「ありがと母さん。俺も愛してるよ」

「ふう!」 ベッドに倒れ込んで、俺は深い溜息をついた。 目を閉じても、頭がソフィアのことでいっぱいになった。

昨日彼女と初めて会った場面を思い出す。 目印は紫色のジャケットだと彼女は言ったけど、紫の服を着ているのは喫茶店に彼女だけだった。 美人なのは認めよう。あと、彼女が顔を俺に近付けてきたとき、彼女の香りは俺の鼻孔をくすぐったことも。 それから、俺が初めに目を留めたのが彼女の唇だったということも。 それはとても柔らかく桃色がかっていて、俺は彼女の目を真っ直ぐ見ないと、何やら本能的な想像をしてしまいそうだった。

「ああ、もう! なんであいつのこと考えてるんだろう? 他の女と何も変わらないじゃないか! 俺の口座を狙ってるんだからな!」

こめかみをぐりぐりしながら、俺はまた起き上がった。 今日は土曜日だけど、重要な会議があるから出社しないと。

~~~~~~~°~~~~~~~°~~~~~~~°~~~~~~~

ソフィアの視点:

「No! Per favore Joseph, non farlo!」 (ジョセフお願い、やめて!) 泣いて懇願しても、彼は私の服を引き裂く手を止めなかった。

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1 第1章出会い2 第2章彼女の過去3 第3章取引成立 (Part One)4 第4章取引成立 (Part Two)5 第5章取引成立 (Part Three)6 第6章取引成立 (Part Four)7 第7章取引成立 (Part Five)8 第8章電話 (Part One)9 第9章電話 (Part Two)10 第10章電話 (Part Three)11 第11章家族の食卓 (Part One)12 第12章家族の食卓 (Part Two)13 第13章家族の食卓 (Part Three)14 第14章家族の食卓 (Part Four)15 第15章家族の食卓 (Part Five)16 第16章再会 (Part One)17 第17章再会 (Part Two)18 第18章再会 (Part Three)19 第19章婚約パーティー(パート1) (Part One)20 第20章婚約パーティー(パート1) (Part Two)21 第21章婚約パーティー(パート1) (Part Three)22 第22章婚約パーティー(パート1) (Part Four)23 第23章婚約パーティー(パート2) (Part One)24 第24章婚約パーティー(パート2) (Part Two)25 第25章婚約パーティー(パート2) (Part Three)26 第26章婚約パーティー(パート2) (Part Four)27 第27章婚約パーティー(パート2) (Part Five)28 第28章婚約パーティー(パート2) (Part Six)29 第29章前言撤回はなし (Part One)30 第30章前言撤回はなし (Part Two)31 第31章前言撤回はなし (Part Three)32 第32章前言撤回はなし (Part Four)33 第33章前言撤回はなし (Part Five)34 第34章結婚式 (Part One)35 第35章結婚式 (Part Two)36 第36章結婚式 (Part Three)37 第37章彼との引っ越し (パート1)38 第38章彼との引っ越し (パート2)39 第39章彼との引っ越し (パート3)40 第40章彼との引っ越し (パート4)41 第41章新しい一日 (Part One)42 第42章新しい一日 (Part Two)43 第43章新しい一日 (Part Three)44 第44章新しい一日 (Part Four)45 第45章友達じゃないし (パート1)46 第46章友達じゃないし (パート2)47 第47章紫 (パート1)48 第48章紫 (パート2)49 第49章紫 (パート3)50 第50章セニョリータ (パート1)51 第51章セニョリータ (パート2)52 第52章セニョリータ (パート3)