目を覚ましたロッキー・バイは汗だくで、その目は困惑を隠せなかった。 悪夢から目覚めた直後のように感じ、 息を切らして、すぐに何かがおかしいことに気づいた。 そして体を起こすと、 目に入った光景に圧倒された。
彼は古典的な装飾の豪華で素晴らしい部屋にいた。 ランプもライトもなかったが、昼のように明るかった。 横たわっていた快適なベッドは金色の絹のキルトと白いチュールで囲まれていて、 おそらく皇帝のベッドもこのようなものではないかと感じた。 白いチュールの向こうのキャビネットには金と翡翠のオブジェがたくさん並んでいて、 どれもかなり高価な品であることが見て取れた。
視界に入るものすべてにロッキーは驚いたが、ふと「僕はどこにいるんだ?」という疑問に襲われた。 彼の最後の記憶は、会議に行く途中だったということだった。 国際動物ゲノムセンターから基調講演をするために招待されていたのだ。 遺伝子研究の分野で若く才能溢れる学者であるロッキーは、仲間の中でもナンバーワンに注目されていて、 彼を超える学者はいなかった。 飛行機でその会場に向かっていたが、航空機事故が発生したので彼が気を失ったのだ。 そして今、彼は不思議な部屋にいた。
地獄でないことは確かだった。 天国だったとしたら、周りの全てをこんなにリアルに感じられなかっただろう。 誰かが死んだら、魂だけが天国へ行くことができると言われているが、 魂は物理的に何も感じることはできないはずだから、 彼の感覚はまさしくリアルそのものだったのだ。 ベッドの柔らかさと心地よさだけでなく、隣のキルトの下には人の温もりも感じた。
突然、ロッキーは隣に人が横たわっているのに気づいて驚いた。 その人を起こさないよう慎重にキルトを上げると、 そこにはエレガントな女性がいた。 彼女はロッキーの腕の中に横たわっていた。 彼からは彼女の顔の半分しか見えなかったが、 その女性が16歳くらいの少女であることは判別できた。
ロッキーはしばらく彼女をみていた。 白いナイトローブを着て、頭、手首、足に金色の装飾品を身に着けていたことから、 良家の子女と思われた。
ロッキーはソワソワしながらつばを飲み込み、 本当に天国にいるのではないかと思った。 そうでなければ、こんな美女が腕の中で眠ってくれるなんてありえないからだ。 天国で他にどれだけいいことがあるのだろうと思うと、彼の唇に笑みがこぼれてきた。
すると、ロッキーの頭に汚い考えが浮かぶと、 突然、眠っている少女はかすかにうなされ、体の向きを変えた。 彼女の顔はロッキーの肩を離れ反対側を向いた。 ロッキーは彼女の顔を見て凍りついた。 彼女の顔は神が作った傑作とも言える美しさだ!
顔はすっぴんだったが、磁器製の人形のように繊細で、 まつげは、長くカールし、息がかかると揺れた。 そして鼻は信じられないほどかわいい形をしていて、バラのつぼみのような唇はキャンディーのように甘そうに見え、ロッキーは味わってみたくなった。 彼女はまだ若いとはいえ、成熟した女性のような魅惑的な雰囲気を醸し出していた。 彼女が成長した暁には何千人もの男が彼女の虜になるだろうとロッキーは確信した。
「ロッキー、やめろ! その子を見つめちゃいけない! まだ若い少女なんだぞ! その子をどうしようって言うんだ?」 ロッキーはそう自分に言いながら、首を振り、すぐに彼女から目をそらした。 心臓の鼓動は高まり、顔は赤く紅潮した。 幸いなことに、彼の年齢はすでに30を超えていたため、 隣に彼女のような美女がいても、自分自身の衝動をコントロールすることができたのだ。 「彼女は僕から見れば幼い少女に過ぎない」と自分に言い聞かせて落ち着こうとし、そして罪悪感が彼の胸に溢れた。
「でも僕は今どこにいるんだ?」 ロッキーは周りを見回しながらつぶやいた。 論理的には、自分は航空機事故で亡くなったはずだが、今は無事で問題ない状態だった。