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妻を社会的に抹殺するライブ配信

もう戻らない――あなたの妻には

もう戻らない――あなたの妻には

四季 香織
昼は優しく、夜は情熱的。それが、陸名悠弥の時水恋に対する評価だった。 しかし、浅井静が余命半年だと告げると、陸名悠弥は時水恋にためらいもなく離婚を切り出す。 「彼女を安心させるためだ。半年後にまた復縁すればいい」 彼は時水恋がずっとその場で待っていると信じていたが、彼女はもう目が覚めていた。 涙は枯れ果て、時水恋の心も死んだ。 こうして偽りの離婚は、本当の別れとなった。 子を堕ろし、人生を再出発させる。 時水恋は去り、二度と振り返らなかった。 だが、陸名悠弥は――狂ってしまった。 ――後に、噂が流れた。かつて傲岸不遜を極めたあの陸名家の御曹司が、血走った目でマイバッハを飛ばし、狂ったように彼女を追い続けた、と。ただ、憐れみの一瞥を乞うためだけに……。
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東京の雨は何も洗い流してはくれない。ただ汚れをぬめらせるだけだ。

藤原聖絵はイエローキャブを降りた。ヒールはすぐに灰色のぬかるみにはまり、安物の革靴から水が染み込み、靴下を濡らし、肌の感覚を奪っていく。聖絵は身じろぎもしなかった。寒さには慣れていた。

ベルベットのケーキ箱を、盾のように胸に抱きしめる。特注の、レッドベルベットケーキ。純一の好物だ。少なくとも、夫になる前の彼が好きだったもの。

聖絵は、麻布にある会員制プライベートクラブ『オブシディアン』の、威圧的な黒いファサードを見上げた。その建物は、彼女のような人間を締め出すために設計された要塞のようだった。

コートの前を合わせた。ここ2年で増えた体重を隠すために買った、ワンサイズ大きすぎるコートだ。代謝異常のせいで、体はたるんだ肉とむくみの牢獄と化していた。かつてはただ地味なだけだった顔も、今ではむくみ、顎のラインに沿ってできたしつこい発疹のせいで、ドラッグストアのファンデーションでは到底隠しきれないほど無残なありさまだった。

「お名前は?」ドアマンは彼女の顔を見ず、その靴に視線を落とした。

「佐伯です」と聖絵は言った。声がわずかに震えた。その名を口にするときはいつもそうだ。まるで盗んでいるかのような気分になる。

ドアマンは一瞬動きを止め、リストに目をやり、それから彼女を見た。唇の端が歪む。それは些細な動きだったが、彼女が記録することにかけては専門家となった、マイクロアグレッションだった。彼は彼女が誰なのか知っていた。誰もが知っていた。藤原家の失敗作。一族の恥。

「佐伯様はVIPスイートにおられます」ドアマンは平坦な口調で言った。「邪魔をしないようにと申しつかっております」

「今日は結婚記念日なんです」聖絵が言う。その言葉は湿った空気の中に、哀れでちっぽけに響いた。「届け物が…ありますので」

彼女は箱を少し持ち上げた。

ドアマンはため息をつき、冷たい空気の中に白い息を吐き出した。そしてベルベットのロープを外した。だが、ドアを開けてはくれなかった。

聖絵は重いオーク材のドアを押し開けた。雨音は消え、代わりにジャズの低い響きと、年季の入った革製品や高級葉巻の香りが漂ってきた。薄暗い廊下を進む。濡れたコートから、豪華なペルシャ絨毯のランナーに水滴がしたたる。ポツリ、ポツリ、ポツリ。自分が場違いであることの証拠を残しながら。

廊下の突き当たりに着いた。VIPスイートのドアは、重厚なマホガニー製だった。ノックしようと手を上げたが、指の関節は木材から数センチのところで止まった。

笑い声。けたたましい、下品な男たちの笑い声。

「おいおい、純ちゃん」と声が響いた。純一の大学時代の友人、大空の声だ。「まさか今夜、あの化け物のところに帰るなんて言わないよな。まだ深夜0時にもなってないぜ」

聖絵は凍りついた。心臓が肋骨に叩きつけられ、痛みを伴う不規則なリズムを刻む。

「顔だけは出さないと」純一の声が騒音を切り裂いた。冷たく、突き放したような声。弁護士と話すときに使う声だ。「3回目の結婚記念日だ。契約では、信託基金からの支払いを有効に保つために、重要な日には夫婦の住居に物理的に存在しなければならないことになっている」

「金のためなら何でもするんだな」と大空が笑った。「見たぜ、あいつ。昔の聖絵を食っちまったみたいだな。それにあの肌…うつるのか?」

聖絵は吐き気を覚え、固く目を閉じた。

「見た目はどうでもいい」と純一は言った。その無関心な口調は、嘲笑よりもひどかった。「あいつは書類上の署名にすぎない。それ以上でもそれ以下でもない。この街で俺が尊敬する女はエレナだけだ。彼女は自分の立場をわきまえている。分不相応なものを要求したりしない」

「エレナに乾杯!」誰かが音頭を取った。グラスが触れ合う音がする。

聖絵はケーキの箱に目を落とした。指は白くなり、ボール紙がたわみ始めるほど強く握りしめていた。

この日のために3日間も計画を練った。ケーキ屋は敷居が高すぎて、自分で焼いたのだ。ささやかなことを覚えていると示せば、もしかしたら、ほんの少しでも、彼が嫌悪以外の目で見てくれるかもしれないと思った。

しかし、彼は彼女のことなど見ていなかった。彼にとって、彼女は妻ではなかった。人間ですらなかった。祖父の遺言書にある一項にすぎなかった。

鋭い、物理的な痛みが胸を切り裂いた。失恋なんかじゃない。失恋は詩的だ。これは、切断。麻酔なしで手足を切り落とされるような感覚だった。

彼女はかがみ込んだ。膝がポキリと鳴った。ドアの外の床に、そっとケーキの箱を置いた。

ノックはしなかった。

立ち上がった。ドアを最後にもう一度見た。泣かなかった。涙は胸の奥深くで、固く凍りついていた。

振り返る。動きはロボットのようだった。左足。右足。

廊下を引き返した。ドアマンが、唇に笑みを浮かべてこちらを見ていた。追い出されるのを期待していたのだ。ひと騒動あるだろうと。

聖絵はまばたきもせずに彼の横を通り過ぎた。重いドアを押し開け、再び雨の中へと足を踏み出した。

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