朝が訪れた。
七瀬結衣が目を開けると、目の前に大きく拡大されたハンサムな顔が飛び込んできた。
彼女は驚いて、反射的に布団をめくり自分の服を確認した。 服が無事であることを確認して、ようやく安堵の息をついた。
彼女は再び隣でまだ眠っている男性を見て、気まずさと後悔の気持ちが込み上げてきた。
二日酔いの頭痛が昨夜の出来事を思い出させた。
昨日、彼女は両親の指示に従い、彼氏の銭東と結婚の話をしに行ったが、銭東が彼女の従姉妹と一緒にいるところを目撃してしまったのだ。
七瀬結衣は怒りと嫌悪感に包まれ、その場で別れを告げてバーに行き、やけ酒を飲んだ結果、こんなことになってしまった。
しかし、幸いなことに、酒の勢いで無茶なことにはならなかった。
目覚めた後の面倒を避けるため、七瀬結衣はそっとベッドから抜け出し、男性が目を覚ます前に立ち去る準備をした。
ところが次の瞬間、ホテルの部屋のドアが外から開かれた。
優雅で豪華な装いの老婦人が冷たい表情で入ってきた。
七瀬結衣は驚いて、しばらく様子を見てから逃げる機会をうかがった。
しかし、老婦人は彼女に逃げる隙を与えず、次の瞬間、彼女に視線を向け、眉をひそめた。
七瀬結衣はその時になって老婦人の顔をはっきりと見て、どこかで見たことがあるような気がした。 思わず「張ばあちゃん?」と声をかけた。
張婉茹は一瞬驚いたが、すぐに七瀬結衣をじっくりと見つめ、彼女の顔立ちを記憶の中のあの優しくて賢い少女と重ね合わせた。
七瀬結衣が五歳の時、家族とはぐれて孤児院にいた。 張婉茹は頻繁に孤児院でボランティアをしており、そこで二人は知り合った。
その後、七瀬結衣は家族に見つけられて連れ戻され、連絡が途絶えたのだった。 まさかこんなに年月が経って、ここで再会するとは思わなかった。