女性の初めては、果たして本当に愛する男性に捧げるべきものなのだろうか──そんな問いが頭をよぎった。
激しい痛みが体を貫いた瞬間、愛世はもう二度と過去には戻れないのだと悟った。
見知らぬ男の暴力にさらされ、涙で視界が霞むほどの屈辱を味わう。逃げ出したいという思いは必死にあったが、酔いに朦朧とした体はまるで鉛のように重く、力が入らず、どうしようもなく現実に屈し、深い絶望に飲み込まれていった。
逃げ道が完全に閉ざされたのだと理解したとき、愛世は歯を食いしばり、震える声で弱さを隠すように絞り出した。「……コンドームを、つけてください」
男はその一言に一瞬だけ動きを止めた。だが、返事をすることもなく、むしろさらに乱暴で冷酷な行為を続けた。
どれほどの時間が経ったのか、愛世にはもうわからなかった。ただ、すべてが終わったとき、彼女は最後の力までも奪われ、気を失うように眠りに落ちていった。
翌朝、重いまぶたをようやく開けると、豪華なスイートルームはすでに空っぽで、乱れ切ったベッドと、全身に残る倦怠感だけが昨夜の出来事が夢ではなく現実だったことを残酷に思い出させてきた。
全ては仕組まれた罠、接待の場でのことだった。彼女は意識を失うほど酒を無理やり飲まされ、そして見知らぬ男に辱められたのだ。
事件の最中、彼女は助けを求めようと必死になった。ちょうどその日、出張から戻ってきたばかりの夫・志の顔が頭に浮かび、何度も助けを求めるメッセージを送り、電話もかけ続けた。ようやく彼が応答したのは最後の一度だけ。しかし、返ってきたのは冷え冷えとした声で放たれた一言だった。「忙しいから……警察に通報しろ」
その冷酷な言葉は、今もなお愛世の胸の奥深くに鋭い棘のような痛みを残している。
彼は、彼女が長年かけて捧げてきた愛も尊厳も、無惨に踏みにじったのだ。
愛世は乾いた笑みを浮かべ、引きつる唇を押さえながらも、心の底では計り知れない悲しみに苛まれていた。
ふと床に名刺が落ちているのを見つけ、何気なく拾い上げた。
その文字を確認した瞬間、全身が氷のように凍りつく衝撃に襲われた。
──宮東氏グループ。
昨夜は暗くて男の顔をはっきり見ていなかった。だが、まさか志の配下の者だったとは夢にも思わなかった。
では、あの悪夢のような計画の背後に、志自身も関わっていたというのか……?
……
冷え切った別荘に戻ったとき、玄関に見慣れた靴とコートが置かれているのに気づき、志が帰宅していることを知った。愛世は一瞬、足を止め、その場に立ち尽くした。