玉座についたヒーロー
作者上沼 鏡子
ジャンル冒険
玉座についたヒーロー
「これはすごく良いね! この少年は少し弱そうに見えるけど、明るい目と優雅な眉毛で非常に魅力的だね」 ロッキーは鏡を見ながら、自分の目を信じることができなかったように、 かなり時間をかけて鏡に映る姿を様々な角度から詳細に確認していた。 そして、今の新しいルックスにとても満足していた。
「バジル王子、お出かけの時間です!」 後ろからメイドの声がした。
「わかった。 案内してくれる?」ロッキーは振り返ると、自信に満ちた声で言った。
メイドたちはすっかり呆気にとられた。 過去のバジルはいつも臆病な少年で、 人と話すときも声は低く、歩くときも頭を下げたままだったからだ。 しかし今の彼は以前とかなり異なっており、 まるで外見だけが以前のままで、中身は全く別の男に入れ替わったようだった。
ロッキーは、数人のメイドに囲まれて部屋を出た。 塔の曲がりくねった階段を歩いていると、幅が広く平坦な通りが見え、 その両側にはあらゆる種類の壮大な建物があった。 多数の鎧を着た警備員がパトロール中だったので、 警戒態勢が敷かれているようだった。
時折、数名の護衛を引き連れた豪華な馬車に乗った人々が彼らを追い越していったが、 彼らは皆、バジルを見て笑おうとカーテンを開けた。
ロッキーは彼らに笑われる理由はわかっていたが、見られていないように振舞った。 落ち着いた表情で見つめ返すと、彼らは急いでカーテンを閉め、スピードを上げた。
「ふん、将来お前たちは今までやったことを後悔することになるだろう」とロッキーはただ冷たく微笑んで、彼らが慌てて行くのを見ていた。
その後間もなく、メイドたちはロッキーを三角形の屋根の広々とした建物に案内した。 壮大な深紅色のドアに入ると、輝かしく壮大なホールの光景が目に入ってきた。 独特のデザインのホールで、 最前部には階段があり、そこには上部の丸い演台につながる10段の階段があったが、 ロッキーにはそれが何のためのものなのかは正確にはわからなかった。 そして、その真上には優雅なデザインの天窓、 中央部分には高さ約1メートルの支柱があり、 その先端に金色のビーズがあり、薄暗い光を放っていた。
そのビーズは何百年もの間、聖ドラゴン帝国の国宝で、 帝国の最重要のシンボルだった。 王室の記録によると、それは無限のパワーを象徴しているということだったが、 残念ながら、この神秘的なビーズと結合することができた者は誰もいなかった。
「グランドドラゴンホール!」 という会場の名誉ある名前が刻まれたボードを頭上に見つけた。
既に、多くの人々が会場に来ていた。 王室のメンバーと貴族も全員美しい衣服をまとって到着すると、 群衆の中を歩き、互いに話し合っていたが、 ロッキーにはその多くがたわいのないお世辞であることがわかった。
ロッキーがホールに入ると、多くの人に注目された。 彼らはお互いに話したり、ロッキーを笑ったりしながら、さげすんだ表情で彼を見ていた。
「誰もがバジルを見下してる」とロッキーは少し首を振りながらも、 彼らの笑いを気にしていなかった。 状況はすぐに変わるだろう。
グランドドラゴンホールでは、豪華な料理が振る舞われていた。 ロッキーは前日から食べていなかったので、口の中によだれが出てきた。 食べ物をとり、角の方にテーブルを見つけると、 グランドドラゴンホールの中を見回し、何か面白いものが無いかを探しながら足を組んで食事をしていた。
この世界の女性は本当に美しい! 彼らの姿は神から授かり物のようだ。 それが自然の美しさかどうかはわからないが、 シャーリーが何か特別なことをして体形を変えたとしても、彼女はまだ男の子にしか見えないだろうな。 ハハ! ロッキーは周囲の美しい少女たちをうっとりと見入りながら、笑いを止めることができなかった。
偶然にも、 ロッキーが笑っていると、グランドドラゴンホールにやってくるシャーリーが彼の視界に入ってきた。
シャーリーはまだハンサムな少年のように見えたが、 洗練されたメイクを施し、美しい顔はより魅力的になっていた。 もし彼女が現代社会に住んでいたら、モダンでシックで中性的なルックスを武器に間違いなくスターまたはモデルになっただろう。 シャーリーを現代社会に連れていくことができれば、彼女はそのルックスで、すぐに人気者になるだろうとロッキーは考えていた。
シャーリーが現れると、多くの若い王子や貴族たちが蛾のように彼女に群がった。
「シャーリーがそんなに人気があるとは理解できないな。 美しいドレスを着れば、美しくなるだろうけど、 胸がもう少し大きければねえ。 でも、彼女はいつも男性用の服を着ていたな。 残念だけどね!」 ロッキーはそれを見て、独り言を言った。
その時、グランドドラゴンホール全体に穏やかな声が響き渡った。 「皇帝陛下のおなりです!」
誰もがグランドドラゴンホールの入り口に目を向けた。 ロッキーも入口に目を向けると、数名の集団がゆっくりとグランドドラゴンホールに入ってきた。 その中の数名は極めて魅力的だったが、 中でも50歳くらいの男性はとても威厳に満ちていた。 彼の額は強そうで、顔つきも情熱的で、そして眉も堂々としていて、 金色のボリュームのあるガウンと金の王冠を身につけて、まるでドラゴンのようだった。 彼がこの国で最高の権力者で、望むものすべてを手に入れることができそうに見えた。 もちろん、誰もが彼の方を向き、敬意を表して頭を下げていた。
ロッキーはその威厳から、彼が聖ドラゴン帝国の皇帝であり、バジルの父であると推測することができた。
彼の後ろには、レナや司祭長を含む数名が続いていたので、 ロッキーは、聖ドラゴン帝国で、レナの地位がいかに高いかがわかった。
またロッキーと同じような、ドラゴンの模様の華やかなガウンを着た20代の男性も何人かおり、 王族と思われた。 彼らが到着すると、貴族の娘たちは全員うっとりしながら彼らを見ているようだった。
「彼ら僕と同じ王子だろう」とロッキーは考えた。 すると、顔立ちのいい男がレナと司祭長の間にいることに気づいた。 彼は剣のような眉毛を持ち、その目はタカのように鋭く、 他の王子たちより際立った独特の空気感があった。
最後に30人の少年がグランドドラゴンホールに到着した。 彼らはわずか15歳か16歳だったが、仲間よりもはるかに強く、大人と同等だったが、 傲慢で他人を見下していた。
聖ドラゴン帝国の皇帝が彼らを先導し、 ゆっくりと群衆の中を厳かに歩き回った後、 グランドドラゴンホールの前に到着し、そこで止まった。 30人の若者がすぐにホールの両側に配置されると、残りの人々は退き、 皇帝、レナ、司祭長、そして顔立ちのいい男だけが、ホール内のすべての人々と向かい合って立った。
ロッキーは隅に立っていたが、 突然、彼はその顔立ちのいい男が自分をさげすんだ目で見ていることに気づいた。