社長に後継者はいない?口のきけない娘と結婚して、急に幸せになった。

社長に後継者はいない?口のきけない娘と結婚して、急に幸せになった。

Rabbit4

5.0
コメント
クリック
1

佐本清祢は加賀見夫人になった。 全ての人が彼女を見捨て、欺いた。佐本清祢は加賀見芳成が他の人とは違うと信じていた。 結婚して三年が経つが、彼女は傷だらけで、子供を失い、愛人に堂々と挑発され、もう愛を期待することをやめた。 加賀見芳成は、佐本清祢が自分の手中にあるものだと思い、好きなように扱えると思っていた。しかし、彼女が振り返ることなく去った時、彼は完全に動揺した。 「加賀見芳成、現実を見て。私たちはもう終わったのよ。」 加賀見芳成は涙をこらえながら言った。「まだ君を失いたくない。」 今回は、彼女は自分の心に従い、もう一度だけ愛することを選んだ。

第1章佐本清祢、ふしだらな女

「……痛むか?」

男の荒い息遣いだけが、部屋に充満している。 身の下の女はひどく抵抗し、男は何度も試みを繰り返さなければならなかった。

アルコールのせいか、男は片手で女のしなやかな腰を支え、まるで手取り足取り教えるかのように、自身を受け入れさせた。

夜が白み始める頃、ようやく部屋の中で重なり合っていた二つの影は静かになった。

浴室から響くシャワーの音で、佐本清祢は深い眠りから意識を浮上させた。 シーツを胸元まで固く引き寄せ、霞のかかった頭で昨夜の記憶の糸を必死に手繰り寄せようとする。

昨日は、長年寄り添ってきた婚約者、東海林様景との婚約披露宴だった。

儀式は盛大で、招待客は佐本、東海林両家の取引先ばかり。 夜には様景の友人たちが集まる席が設けられたが、口のきけない彼女は断る術を知らず、立て続けに酒を飲まされた。 最後の記憶は、様景が自分を最上階のプレジデンシャルスイートへ送り届けてくれたところまで。

その後、ぷつりと意識が途切れ、アルコールに煽られた男女が、求め合うままに激しく肌を重ねた。

やがてシャワーの音が止み、湯気の向こうから、腰にタオルを一枚巻いただけの男が現れる。 広い肩幅、引き締まった腰。 水滴が、鍛え上げられた筋肉の筋をなぞるように滑り落ちていく。

初めての夜を越えた清祢は、羞恥心に顔を背けた。 昨夜の熱い肌の記憶が蘇り、顔が熱くなる。

「起きたか?」 加賀見芳成は眉を上げ、ベッドの上で縮こまる女に目をやった。 白い頬には疑わしいほどの緋色が残り、弾けば壊れてしまいそうなその肌から目が離せない。 彼はさながら満腹の獣のように、満足げに己の獲物を見つめていた。

――この声は、様景じゃない!

清祢は弾かれたように顔を上げ、男と視線がぶつかる。 そこには侵略的な光を宿した、漆黒の桃花眼があった。

血の気が引き、思考が真っ白に染まっていく。

男の顔をはっきりと認識した瞬間、昨夜の甘美な記憶は、残酷な悪夢へと姿を変えた。

ぽつり、とシーツに落ちた雫が、堰を切ったように溢れ出す。 彼女は全身をわななかせ、絶望と無力感に襲われながら、震える指先で必死に問いかける。

「あなたは、誰?」

「どうしてここにいるの?」

「昨夜の人は……あなただったの?」

女は口が利けないのか? 加賀見芳成の目に、わずかな驚きがよぎった。

どうりで昨夜、あれほど痛みに耐えながらも、声一つ漏らさず涙を流すだけだったわけだ。

芳成は彼女を品定めするように見つめる。 その視線は彼女の肌の上を這い、瞳の奥の感情はますます読み取れなくなっていく。

芳成は深呼吸を一つし、こめかみを引きつらせた。 怒りがこみ上げてくる。 帰国したばかりの昨夜、旧友たちに無理やり酒を飲まされ、餞別だとルームキーを押し付けられたのだ。

薄暗い部屋の中、互いに泥酔していたとはいえ、最初にキスを仕掛けてきたのはこの女の方だった。 それを情熱的だと感じてしまい、相手の素性を確かめもせずに抱いてしまった。

昨夜はあれほど積極的だったくせに、今さら何を貞淑ぶっているのか。 芳成は女を持て余し、侮蔑に口の端を歪めて吐き捨てるように言った。 「手話は分からん。 服を着てとっとと消えろ」

いつまでもこうしてはいられない。 清祢は男がそっぽを向いた隙に、慌ててドレスに袖を通す。 だが、肌着は無残に引き裂かれ、もはや身につけられる状態ではなかった。

彼女がなんとか身支度を終え、男の前に立つ。

芳成は傍らに立ち、朝の光の中に佇む女の姿に、一瞬、我を忘れた。

小さな瓜実顔に、潤んだ瞳。 桜色の唇は誘うようにわずかに腫れている。 長い髪は乱れたまま胸元にかかり、光を放つように白い肌が痛々しいほど目に映る。 泣き腫らした目はひどく赤いが、その狼狽した姿さえも、実に美しかった。

ふと、くしゃくしゃになった白いシーツの上に、暗く、それでいて鮮烈な一点の赤が滲んでいるのが目に入った。

――処女だったのか。 芳成は無意識に喉仏を上下させた。

女が出て行く気配がないのを見て、芳成は合点がいったように、財布から分厚いドルの束を抜き出し、無造作に彼女の手に押し付けた。

「これで足りるか?」 彼が見てきた女たちは皆こうだった。 だが、芳成の言葉が終わる前に、女は札束を彼の体に叩きつけた。

彼は目を細め、全身から危険な気配を放つ。 「なんだ、 足りないのか? 仲介した奴が俺の友人から大金を受け取ったと聞いているが。 体を売る前に相場も調べなかったのか? それとも、 大物を釣るために長期戦でも狙うつもりか? 夢を見るな……」

パァン!と乾いた音が響き、芳成は打たれて呆然とした。 口の中に広がった鉄の味を吐き捨てると、その目に殺意にも似た獰猛な光を宿す。 「聞け!てめえがどうやってこの部屋に紛れ込んだか知らねえが、昨夜はてめえからキスしてきたんだろうが。 今さら被害者ぶるな……!」

清祢はもう何も聞きたくなかった。 床に散らばる緑の紙片を踏みしめ、半狂乱で部屋を飛び出した。

大通りでかろうじてタクシーを捕まえ、スマートフォンの電源を入れると、無数の不在着信とメッセージが画面を埋め尽くした。

メモ帳に行き先を打ち込み、運転手に見せる。

流れゆく景色のように、清祢の心もまた千々に乱れていた。 男の言葉が耳にこびりついて離れない――お前の方からキスしてきたんだ。 なぜ。 どうして一夜を共にした相手が、見ず知らずの男だったのか。

車は壮麗な邸宅の前で停まった。 一刻も早くこの身を隠したい、シャワーで全てを洗い流したい一心で、清祢は屋敷へと駆け込んだ。

だが、全ては手遅れだった。 邸宅の広大なリビングは、水を打ったように静まり返っていた。そこにいる全員の視線が、刃のように清祢に突き刺さる。

乱れた髪、泣き崩れた化粧、真っ赤に充血した瞳、深く刻まれたドレスの皺、そして何より――白い首筋に生々しく咲く、いくつかの赤い痕が、彼女の過ごした背徳の夜を雄弁に物語っていた。

やがて、妹の佐本ももが甘ったるい声で静寂を破った。 「まあ、お姉様、どこにいらしてたの?みんなで一晩中探したのよ。 様景お兄様なんて、心配のあまり警察を呼ぶところだったんですから」

東海林様景は氷のように冷たい表情で、清祢の首筋の痕に視線を突き刺した。 「どこへ行っていた?その様はなんだ?」 両親までもが、汚物でも見るかのように、侮蔑と嫌悪、そして憎しみに満ちた眼差しで彼女を上から下まで値踏みしている。

悔しさと、混乱と、無力感と、恐怖が濁流のように押し寄せる。 声にならない叫びを、彼女は最も信頼していた婚約者へ、必死に手で訴えかけた。

「どこにいたの!どうして私をホテルに一人にしたの?」

様景は手話をある程度解するはずなのに、冷ややかに眉をひそめるだけだった。 彼は己が能弁であることを盾に、反論する術を持たない清祢へと、全ての罪をなすりつけた。

「俺たちはもう婚約した仲だぞ。 一晩中帰りもせず、どこの馬の骨とも知れん男の痕をつけて帰ってくる……俺の気持ちを考えたことがあるのか!」 様景は声を荒らげ、額に青筋を立てる。 その姿は、一途な想いを裏切られた、悲劇の男そのものだった。

周囲から同情的な囁き声が聞こえてくる。

「あんなみっともない姿で、よく東海林様の前に立てるわね……」

「どんな躾をされてるのかしら。 婚約者がいながら外で男遊びなんて。

結婚したところでろくなものじゃないわ」 誰も彼女を信じない。 四周は聞くに堪えない非難と罵声、そして下品な噂話で満ちている。

清祢は呆然としていた。 昨夜、酔った自分を最上階の部屋へ送り届けたのは、間違いなく様景だったはずだ。

彼女は言葉を発せない。 そして誰も、彼女の言葉なき言葉を信じようとはしない。

清祢は何度も手話で訴える――「違うの、話を聞いて!」

だが様景はあまりに性急に、大勢の前で最も残酷な言葉を投げつけ、彼女の最後の尊厳を完膚なきまでに踏みにじった。

「俺と婚約したその舌の根も乾かぬうちに、他の男と寝るとはな。 佐本清祢、お前がそこまでふしだらな女だったとは見損なった」

清祢の手話が止まり、両腕が力なく垂れ下がる。 光を失った瞳から、涙だけが静かに流れ落ちた。

「佐本清祢、この東海林様景は、ふしだらな女を妻に迎えるつもりはない。 婚約は、破棄させてもらう。 円満にな」

「私じゃない……あなたが、仕組んだの?」 狂ったように様景の襟首を掴んだ清祢の目に、彼の首筋に刻まれた、見覚えのある赤い痕が飛び込んできた。 彼女がその意味を悟るより早く、乾いた衝撃が頬を打った。

父、佐本知也の手が、殴った力でわななく。 彼は怒りを抑えきれず、娘の鼻先を指差して罵倒した。 「この恥知らずが!我が家の面汚しめ!」

続きを見る

Rabbit4のその他の作品

もっと見る
狂犬令嬢の極上ざまぁ

狂犬令嬢の極上ざまぁ

都市

5.0

藤原涼音。彼女は国家が極秘裏に育て上げた至宝であり、組織内の誰もが羨む天才少女。圧倒的な戦闘能力を誇り、誰にも縛られない気高き魂の持ち主だ。 だが、その華やかな経歴の裏には、誰にも言えない孤独があった。幼くして両親を亡くし、たった一人の双子の妹と二人、身を寄せ合って生きてきた過去が――。 七年の時を経て、ついに国家から自由を許された涼音は、胸を弾ませて故郷へと帰還する。 しかし、そこで目にしたのは地獄だった。亡き両親の豪邸を乗っ取り、贅沢三昧の叔母。そして、犬小屋で寝起きし、家畜同然の扱いを受ける妹の姿――。涼音の怒りが爆発し、食卓をひっくり返す! 叔母からの脅迫? 即座に冷徹な手段で提携を断ち切り、叔母の会社を瞬時に破滅へと追い込む! 学園での陰湿なイジメ? 妹になりすまして潜入し、目には目を、暴力には暴力を。加害者が地に伏して命乞いする様を、全ネット中継で晒し上げる! 「身分が低い」と嘲笑される? 涼音は淡々と言い放つ。「ええ、私はただの一般人よ」 その直後、名門旧家が公表する。「彼女こそが、我が家の正当な後継者だ!」 さらに国家科学研究所までもが宣言する。「我々こそが、彼女の最強の後ろ盾である」と! …… 北村凌也。謎に包まれた名家の当主であり、決して表舞台に姿を現さない男。 性格は冷酷無比。血の海に佇み煙草を燻らせていた、瞬きもせず人を殺めた……そんな恐ろしい噂が絶えない。 だがある日、目撃される。彼が涼音を壁際に追い詰め、その暗い瞳にどこか切ない色を宿して迫る姿が。「涼音、邪魔者は始末した。……そろそろ、俺の相手をしてくれてもいいだろう?」 「私たち、ただの協力関係でしょ?」呆気にとられる涼音。 だが北村は深く息を吸い込むと、その唇を奪い、囁いた。「……これでも、まだ他人行儀か?」

目覚めた妻は、裏社会の女帝でした。

目覚めた妻は、裏社会の女帝でした。

都市

5.0

【最強カップル+名門一族+極道の女帝+壮絶な復讐+真の相手役とのハッピーエンド】 夏目綾華。彼女は、闇社会の帝王に愛された箱入り娘にして、組織の次期首領として嘱望される「裏社会のプリンセス」だった。 しかし、7年に及ぶ愛の迷走がすべてを狂わせた。彼女は秋山慎決のために裏稼業から足を洗い、プライドを捨てて嫁として尽くし、その天才的な手腕で彼のために会社を興し、秋山家を富豪へと押し上げたのだ。 だが、その献身への対価はあまりに残酷だった。最愛の夫と、唯一の親友による裏切り――。 3年間の昏睡。その最中、秋山慎決は彼女の耳元で甘く、冷酷に囁いた。「綾華、俺のために……お前は永遠に目覚めないでくれ」 眠り続ける彼女の病室で、二人は情事に耽り、背徳の快楽を貪り続けた。 そして会社を完全に奪うため、彼らはついに彼女の抹殺を画策する。 だが、眠れる獅子は目覚めた。その瞬間、運命の歯車が逆回転を始める! 奇跡の覚醒を果たした綾華による、徹底的な断罪劇の開幕だ。クズ男を地獄へ叩き落とし、裏切り女を引き裂き、傲慢な義父母を踏み躙り、社交界を揺るがし、世界中を震撼させる――。 かつて世界を震撼させたマフィアの女帝、それは彼女だ! 国際的な武道記録を持つ最強の達人、それも彼女だ! 世界の裏経済を牛耳るフィクサー、それすらも彼女だったのだ! その正体が露見するや否や、ハイソサエティは騒然となり、名門一族たちは戦慄した! かつて自分のためにエプロンを着け、甲斐甲斐しく尽くしてくれた女が、世界の表舞台で眩いほどの輝きを放っている。秋山慎決は血走った目で膝をつき、許しを乞うた。 「消えろ!」――夏目綾華の一撃が、彼を無慈悲に吹き飛ばす。 彼女は踵を返し、その背後で騎士のように佇む男を見つめた。10年以上もの間、彼女を一途に待ち続けた幼馴染――世界最強の軍事王である松平昭彦に向かって、綾華は艶やかに微笑む。「あなたの告白、受けてあげるわ」

サヨナラの後は、兆円の令嬢として輝きます!

サヨナラの後は、兆円の令嬢として輝きます!

都市

5.0

結婚から二年。神崎凪は知ってしまった。完璧だと思っていた結婚生活が、すべて仕組まれたペテンだったことに! 藤川蓮と結ばれるためなら、家族との縁さえ切った。そうして全てをなげうって手にしたのは、偽造された婚姻届と――「身代わり」という残酷な真実だけ。 凪は悟った。どれだけ愛を注いでも、決して温もることのない心があるのだと。 彼女は決意を固め、長く絶縁していた父へ電話をかける。家に戻り、政略結婚を受け入れるために。 周囲は凪を嘲笑った。男に媚びへつらい、都合よく扱われるだけの惨めな玩具だと。 だが、彼女は華麗に変貌を遂げる。誰もがひれ伏す、気高き女王へと――。 F1サーキットを支配する謎の天才レーサーにして、世界が熱狂するトップ調香師! さらには、カジノ界を裏で牛耳る伝説のフィクサー! かつて彼女を蔑んでいた者たちは今、その圧倒的な輝きをただ仰ぎ見るしかない。 藤川蓮が失ったものの大きさに気づき、必死に復縁を迫った時――彼女の隣にはすでに、ビジネス界の生ける伝説江原の若様の姿があった! その男は凪の腰を愛おしげに抱き寄せると、冷ややかに言い放つ。「藤川社長。私の妻はお腹の子も目立ち始めたというのに、貴方はまだ過去に未練タラタラですか?」

当てつけ婚の相手は、正体を隠した世界一の富豪でした

当てつけ婚の相手は、正体を隠した世界一の富豪でした

都市

5.0

新婚初日、菊池星奈の花婿は、あろうことか別の女と駆け落ちした! ブチ切れた彼女はその辺の男を捕まえ、強引に結婚を迫る。「私を娶る度胸があるなら、今すぐ籍を入れてやるわ!」 勢いで入籍して初めて知った事実。なんと夫となったその男は、藤井家の面汚しと名高い“落ちこぼれ御曹司”、藤井勇真だったのだ。 世間は嘲笑う。「あんなクズを拾うなんて、命知らずにも程がある!」 裏切った元婚約者までが現れ、白々しく忠告してくる。「俺への当てつけで、あんな無能な男を選ぶなんて馬鹿げてる。 遅かれ早かれ、絶対に後悔して泣きを見ることになるぞ!」 だが、星奈は冷ややかに言い放つ。「失せなさい!私たちは愛し合ってるの。夫を侮辱するのは許さないわ!」 誰もが思った。菊池星奈は狂ってしまったのだ、と。 だがある日、衝撃の真実が明らかになる。藤井勇真の正体――それは、世界経済を裏で操る“正体不明の大富豪”その人だったのだ!世界中が震撼する中、 全世界注目の生中継で、彼は星奈の元へ歩み寄り、その場に片膝をつく。差し出された手には、200億円もの価値を誇るダイヤモンドリングが輝いていた。 「世界一の富豪の妻として――これからの人生、僕に預けてくれないか」

おすすめ

すぐ読みます
本をダウンロード
社長に後継者はいない?口のきけない娘と結婚して、急に幸せになった。
1

第1章佐本清祢、ふしだらな女

05/02/2028