神になる
作者崔 彰寛
ジャンルファンタジー
神になる
「ルオ家には2つの秘伝の魔法薬があることを知ってるだろ? そして、少し前に俺はその1つ目を飲んだんだ」 ペリンは自慢げに言った。「この薬マジですげぇんだって。 純粋な魔法の力は俺の肉体を強化し、筋肉精錬の境地から骨精錬の境地へと進化させたんだ。 薬がたった10分の1効果を発揮しただけでそれだと! 残りも俺の身体の中で、俺の肉体を無限に強化し続けてくれるんだ。 臓器精錬の境地に到達するまであとほんのちょっとらしいから、骨髄精錬の境地もすぐそこってとこだ!」
ゼンはペリンの話を聞いて歯を食いしばった。 2つの秘伝の魔法薬は、ルオ家の最も貴重な宝物で、 ゼンの先祖が残した聖なる魔法薬だった。 家族の中でもほんの一握りの者だけが知っている神聖な場所に厳重に保管されており、 ほとんどの人は魔法薬を使用することはもちろん、見ることさえ許されていなかったのだ。
古い教義によると、16歳より前に骨精錬の境地に達した者だけに魔法薬を使用する資格があるという。
体の精錬には、肌精錬の境地から始まる5段階があり、 肌精錬を習得したものだけが、2番目の筋肉精錬に移行することができ、 骨の精錬はその次の第3境地で、 最後の2つの境地は、臓器の精錬と骨髄の精錬である。 5つの境地はそれぞれ異なり、大抵の人は一つの境地を習得するのに何十年もの修練の時を要するだろう。
なので、もし30歳になる前に第三の境地に達したのならば、それは奇跡とも言えるし、 ルオ一族全体もその才能を認めるだろう。
さっきも言ったように、教義によると、16歳になる前に第三の境地に達した者だけが魔法薬を使用する資格を有するという。
16歳未満で骨精錬の境地に達せたなら、それは間違いなく超人で、 それもC郡全域にわたり数百年もの歳月を経てやっと誕生した、たった一人のスーパー超人といえるだろう。 それが、過去300年間ルオ家の秘伝魔法薬が使用されていなかった理由でもある。
父親の生前、ゼンは有望な子供として認識されており、
14歳の若さで、第二の境地、筋肉精錬の極致にも達した 彼の才能と努力はC郡の王からも、 ゼンはルオ一族の繁栄希望であり、神に恵まれた者、そして天才の中の天才であると讃えられた。
しかし、そのような大事な時期に、お家騒動に苦しみ、遂には父親も兄弟に殺されてしまった ゼンは奴隷にされ、囚人と、サンドバッグになり、 鍛錬をすることも許されず、魔法薬を服用する機会も失った。
一方ペリンはごく普通で、とびぬけた才能など皆無だった。 ちょうど16歳で筋肉精錬の境地に達したのが精々で、 魔法薬を使用する資格が無かったはずの彼はそれでも教義を破ってまで薬を使ってしまったのだ。
当然ゼンの物になるはずだったこの魔法薬は こうして不意にこの才能のない阿保に奪われてしまった。 落ち着いて家族の運命を受け入れるのに2年も掛かったゼンだが、ぺリンに挑発された今、その心は平穏では無く、 今にも怒りを抑えられなそうになっていた。 「ペリン・ルオ、この卑劣野郎が! 先祖の教義を無視して、許可なく聖薬を服用するとは!」
「まあ、お前は隙間を這いまわる虫と同じくらいどうでも良い存在だ。 何の役にも立たない! でも俺は違う、俺はもう骨精錬の極致に達したんだ。 500キロのものでも片手で持てるんだぜ! つまり奴隷のお前を 片手で潰せるんだからな。 今日はな、練習を終えた自分への慰労のために、サンドバッグを探しに来たってわけ!」 ペリンは、ゼンの言葉は無視し、適当に誰かを指さした。 「よしお前に決めた!」
彼はゼンではなく、代わりに一人の中年男を選んだ。 男はペリンが自分を指さしているのを見て震え、 かなりの損傷に耐え得る厚い革の鎧を着てはいたが、命の危険を感じてならないのだ。 すでに骨精錬の境地に達したペリンを相手に、もはや鎧は意味をなさないだろうと思い、 男はただ震えながら失禁した。
ぺリンは深呼吸をし、両手で拳を握りしめ、 ルオ家に伝わる「シタン拳」の独特な姿勢を取り、 身体を覆う紫色の光を放出させ、内なる力を最大限に見せつけた。
「い… 命だけは… 若旦那様! お慈悲を!」 ぺリンの勢いを見て、その拳で叩き潰されたら自分は死ぬだろうと思い、 奴隷は必死の表情を見せ、 憐れみを求めてうめき声を上げ続けながら、ついにひざまずいた。
「バーン!」
ペリンは奴隷の懇願に耳を貸さず、 その胸に拳をぶち込んだ。 すると革の鎧は一瞬でバラバラに引き裂かれ、 男は道場の壁にぶつかった衝撃で跳ね返り、 そして、屍となって鈍い音を立てながら地面に落ちた。
たったの一撃で奴隷は死んだ。
「なんて強力な拳! 若旦那様! ルオ家の若者の中で、あなたほど強い人はいないでしょう」
「我らが若旦那様が居ればルオ家の繁栄は約束されたようなもの!一族はきっとますます繫栄するでしょう」
感動し、恐れを抱きながら、子供たちは若旦那を崇め奉った。
ペリンはこのパンチの効果に非常に満足しながら、 振り返ってゼンを悪意のこもった眼差しで見た。
ゼンは後退した。 中年の男よりもはるかに強かったとはいえ、ペリンの一撃ではひとたまりも無かったであろう。
ペリンは笑いながら手を差し伸べ、ゼンの肩を2回激しく叩いた。 「まあ、落ち着けよ。そんなにすぐには殺さないから。 この俺、ペリン・ルオがお前などよりはるかに強いことを知らしめてやるのさ」
ペリンは話すのをやめ、立ち去ろうとしたが、 ちょうどその時、何かを思い出して振り返り、「あ、あと一つ。 あの天才の従妹が、今星雲宗でうまくやれてないようで、しかもちょっと影響力のあるやつを怒らせたらしくてな、 罰としてもう煉獄の山に送られたそうだ。 臓器精錬の境地に達したら彼女を救けに行ってくるよ。ハハハ…」
それを聞いた途端、ゼンの胸は苦しくなり、心臓が早鐘を打った。