新しい始まり
作者Val Sims
ジャンル恋愛
新しい始まり
エデンは、ウィローヒルズからロックキャッスルの東にある芸術的な地区フォレストクリークの彼女のアパートまでの30分間、熟睡していた。
彼女は窓の外を見てあくびをして体を伸ばすと、タクシーの運転手に対し寝落ちしてしまったことを恥ずかしく思った。 最後に覚えているのは、彼がエアコンの温度は丁度いいかどうか聞いて来たことだった。
彼女は、男性用のシャツにコートを羽織っただけでその他なにも身に付けていなかったのに、見知らぬ人の車の後部座席で眠りについたのは果たして勇敢なのか、それとも単に愚かなのか分からずにいた。
そしてまた自分の席に移り、眠っている間にうっかり開いていないことを祈って、ぼんやりと足を組んだ。 下着を着けていないことは、思ったよりも開放的なことではなく、 むしろ無防備で、全裸でいるように感じさせた。
昨夜の酷い決断から距離を置く余裕もできた今、彼女が次にやらなければならないことは、紛失した下着がどこにあるのかを見つけ出すことだった。 それがトレンチコートのポケットには入っていなかったことは予想済みだが、しかしリアムの部屋を出た時に間違いなくそこにもなかった。
彼はわざと隠したのか?それとも自分がしたことを一生の思い出にするために、女性の下着を盗む変質者なのか?
それについて考えれば考えるほど、リアムの部屋の左側にあるバスルーム付きの寝室に続いているだろう、摺りガラスドアの隣のウォークインクローゼットには大量の色んな形、色やサイズの女性用の下着があるはずだと確信していた。
長年、彼はどれだけの下着を集めたのだろう? それに、なにが彼女を夢中にさせ、彼を選んだのだろう?
「はあ…」 彼女は負けを認めてうなり声をあげると、茶色の髪が彼女の顔に覆いかぶさった。
「大丈夫ですか?」 とジュードはバックミラー越しに、穴が開きそうなほど彼女を見つめた。
エデンは首を横に振った。 彼女は大丈夫ではなかったのだ。 彼女は昨夜から、決して大丈夫であることはないだろう。
「もうすぐ着きますよ」とジュードは電話で到着予想時間を確認し、彼女が感じている惨めさの理由を完全に勘違いし、安心させるように微笑んだ。
彼女は、厳しい尋問が待っているアパートへあまり帰りたくなく、 グループチャットの盛り上がりから見るといずれは帰らなければならないが、できる限り遅らせるようにした。
「あそこの角で降ろしてください」と彼女は運転手に言った。
向こうは彼女を見て、心配そうな表情で聞いた。 「あそこでいいんですか?」
そう。あそこでよかった。 彼女は炭水化物が欲しかった。 大量に。 それに、プランBも。 彼女はプランBで上手く行かなかったことはなかった。
「五つ星の評価を忘れないでくださいね!」 彼女がトヨタカローラから滑り出ると、ジュードが彼女に声を掛けた。
でも、彼は五つ星評価に値するだろうか?エデンは5番街とメインアベニューにあるパン屋へ行くために道を渡りながらそう考えていた。
午前8時過ぎ、この近辺は土曜の朝の買い物に出かける人たちで騒々しく、マーケットの店主たちはカートを押し、シビックシアターの屋上にあるフリーマーケットで大もうけをする準備を始めていた。