大学の入学初日。幼なじみの彼に送ってもらって寮に着いたら――とんでもないルームメイトと遭遇した。
彼女は私の彼にぴったりくっついて、「年のわりにオーラあるよね~、まさに将来有望って感じ♡」
なんて媚びた声で褒めちぎるくせに、私には態度を一変させて、皮肉混じりに言ってきた。「ブランドもどきのバッグで、成金お嬢様ごっこ?大変ねぇ~」
さらにベッドのシーツを整えていたら、わざとらしく息を呑んで、
「えっ!?昨日一緒に来てた年配のオジサマ、学校近くにマンション借りてくれるって言ってなかった? あれぇ~? お商売、潰れちゃったのかな~?」
極めつけは、私と彼が「卒業したら結婚する」って話を聞いた瞬間。寮中に響き渡る声でこう叫んだ。
「うっそでしょ!?今どきそんな、男にすがって人生楽したい系の“港区女子”みたいな子、まだいたのー!?」
……あまりの面白さに、心の中で爆笑しちゃった。
“年配のオジサマ”? ――それ、うちの親父です。財界でも名の知れた超大物。
そして、今の彼?親父の運転手の息子です。
......
入学初日、久我湊が送り迎えを買って出てくれた。
ようやく両親に認められた彼にとって、今は正念場。
だから今朝、私の家に迎えに来たときも、少し前に私が選んであげたオーダースーツを、わざわざ着てきていた。
父は特別にマイバッハを一台つけてくれて、大学生活のあいだはずっと湊が送り迎えをしてくれることになっている。
キャンパスに着いた私は、まず寮へ向かった。もし中で誰かが着替えていたら、男子がついてくるわけにもいかないと思ったから。
けれど、部屋のドアは開け放たれたまま、中はもぬけの殻だった。
なんとなく目についたベッドに荷物を置こうとした、そのときだった。背後から、刺すような声が飛んできた。
「ちょっと!そこ、私のベッドなんだけど!」
振り返ると、ドアのところに女の子が立っていた。眉を吊り上げ、怒りを隠そうともしない。
私は本当に人の場所を取ろうとしていたのかと焦って、すぐに彼女のもとへ歩み寄り、手を差し出して謝った。
「ごめんなさい。空いてると思って……」