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甘やかされた女

第5章闇が襲う 

文字数:4082    |    更新日時: 09/02/2021

エミリーはジャックに恐怖を抱いた。彼がなぜこれほどに怒っていて、暴力的で、無理矢理にレイプも厭わない状況を想像もしていなかったからだ。 ジャックが体重全てをかけてエミリーを乗っかっているにもかかわらず、エミリーは必死に彼から逃れようとした。 「離れて!触らないで!」

野獣のように狂ったジャックにレイプされようとしている今、エミリーにはこれを回避できる可能性はゼロに等しかった。

「なぜ触れてはいけなんだ? エミリー、君はもう汚物やキズモノの商品と同じなんだよ。 ‐

ジャックは激しく叫んだ。その目は怒りに満ち、まるで生贄を食するかのような目つきでエミリーを凌辱する。

その時だった。突然、ジャックの車の後ろから甲高いクラクションが鳴った。 二人はともにそのクラクションに驚いた。

その一瞬の隙をついて、エミリーはジャックの股間を狭い隙間の中でも思いっきり蹴り上げた。

「うあぁぁぁ…。」 ジャックはギンギンに張られた帆を折られ、あまりの痛みにその声は泣き声にも聞こえ、目を閉じて悶えている。

エミリーは彼を跳ね除けるようにどかすと、パニックになりながらも素早く服を集めて車から降りた。 彼女はまるで悪魔に追われているかのように、周囲に目もくれず、できるだけ速く走って逃げた。

ジャックはエミリーが徐々に遠くに消えていくのを見つつも、どうしようもい痛みに悶え苦しんでいたため、エミリーを追いかけることはできなかった。 「エミリー…。」それは、ジャックに残された力と精神の最後の言葉。残された怒りを必死にかき集めて発した叫びだった。

それでも彼は「はい、そうですか」と簡単にエミリーと別れることを受け入れられなかった。 自分が愛した女性に裏切られたという事実と、自分がエミリーを味わう前に別の男性にその一番美味しいところを持っていかれたという怒りに。 エミリーとエミリーの新しい恋人が自分に犯した代償を払わせるとジャックが心に決めたとき、復讐の暗い炎が彼の中で燃え始めた!

ジャックがこの決心でふと我に返えると、エミリーへのレイプを止めた甲高いクラクションを思い出した。 ジャックは車から降り、水を差した忌々しい車を探した。

が、すぐにジャックは道端で凍り付いた。それほど遠くないところに見覚えのあるマイバッハが停まっていた。 ジャックは車の所有者が誰であるかをもちろん知らないわけはない。瞬時に気が遠くなった。

彼の予想通り、石のように硬い表情をし、海をも凍らせるような冷たい視線をジャックから離すことなく、男性がマイバッハから降りて彼に向かってきた。

ジャックは手ぐしで髪を整え、シャツの裾を引き、ズボンのウエストを引き上げ、自分に向かってくる男性を待つしかなかった。

そう、それはジャックの祖父の養子であり、ジャックの名目上の叔父であるヤコブ・グーだった。 叔父といってもヤコブはジャックより3歳年上なだけだ。 ヤコブはまだ若かったが、すでにグー一族の家業の最高経営責任者を務めていた。 ジャックの耳にも叔父であるヤコブは押しの強い面があることは聞こえてきており、内心ではヤコブのことを尊敬し憧れていた。

「ヤ、ヤコブ叔父さん…ど、どうして…。」なぜヤコブが今ここにいるのかジャックには想像もつかなかったが、それでもなぜか、ジャックは罪を犯したような不安を感じていた。

パーーーーン!!

ジャックの言葉は、まっすぐ向かってきて、思いっきりジャックの頬を張ったヤコブに止められた。

ジャックは茫然自失。ヤコブのビンタにただただ立ちつくすのみだった。 「ヤコブ…叔父さん…?」

ジャックが何を言おうとも、ジャックへの失望とヤコブ自身のことを説明する気などヤコブにはさらさらなかった。 ヤコブはひと言も発しないまま、ビンタに続いてジャックの腹部を素早く強く蹴り上げた。

ジャックはバタリと地面に倒れ、身悶えしていた。 ヤコブへの尊敬の念はあったが、理由を説明されるでもなく、ただ殴られることはジャックにとって不本意なことだった。 「…ヤコブ…叔父さん…どうしたっていうんだよ…。」ジャックはか細い声でヤコブに尋ねた。

ジャックのその言葉はヤコブの火に油を注ぐことになった。ヤコブはジャックを殴り殺さなんほどに、彼を蹴り続けた。

ジャックは自分が叔父ヤコブに到底及びもしないことはわかっていた。一族内におけるヤコブの地位を考え、ジャックは反撃することをあえてしなかった。 ジャックは歯を食いしばり、次々と繰り出されるパンチやキックに耐え、ついに気を失ってしまった。

それでもヤコブは後ろ髪を引かれる思いでその場を去った。彼は何も言わずジャックを道端に残したが、サムがジャックを病院へ連れて行った。

病院で治療を受けるも、ジャックはしばらくの間いたるところに傷を負ったままだった。 ‐そのうえ、ヤコブがなぜジャックにそこまで怒りをぶつけてきたのか、まだジャックは知る由もなかった。

実際のところ、ヤコブはいつもジャックにとても親切で、きちんと高等教育を受けさせ、グー一族としての特権も与えていた。 その証拠に、ヤコブは、一族の顔に泥を塗るようなことをしない限り、ジャックの非常識な悪事にも目をつぶってきた。

まさか、先日、売春防止法の件で警察に一時拘束されたことがヤコブの耳に入ってしまったのだろうかとジャックは考えた。

考えれば考えるほど、それしかないと彼は思うようになった。 ― そうだ。それ以外に理由などない。 ―ジャックは自分で自分に結論付けた。 あの合理的で論理的思考のヤコブである。赤の他人であるエミリーのために自分をここまで痛めつけるなど、明らかに時間の無駄だと考える人間だとジャックはヤコブはについて考えたからだ。 あぁ、なんとしたことか!

ジャックはヤコブに対して本当に頭が上がらない状況になってきた。 しかし、ことエミリーに関しては…。 どうして彼女が裏切りなどしようとは! ジャックは恋人エミリーを抱いた男を打ちのすために、彼女のまだ見ぬ恋人を探し出すことを心に決めた!

エミリーはジャックが入院している数日間は嫌がらせなどされず、平穏な暮らしを取り戻していた。 しかし、エミリーとジャックの破局のニュースは瞬く間に彼女の会社中に広まった。それに加えて、 ローズの嘘のおかげで、エミリーは会社の皆に“自分の恋人ををだました恥知らずな女”というレッテルが貼られ、ローズとの友人関係も破綻したのだった。

エミリーは落ち込むどころか「ローズは自分のことを話しているか?」と嘲笑していた。 だから彼女は沈黙を通した。 なぜにローズは誰にでも噓をつくことができ、なぜに自分で自分の価値を下げるような悪質で恥知らずなことができるのかと。そうエミリーは考えていた。

ローズのことを無視し、エミリーは言い訳もしなかった。なので、とにかくローズの流した噂の影響をまともに受けた。 エミリーの会社での影響は降格だけではなかった。 ファ氏の指示でローズのアシスタントの1人にされてしまった。

ローズは有頂天。エミリーに仕事でも勝ったと確信し、この上ない満足感に浸っていた。 というのは、エミリーがローズよりもはるかに才能あるジュエリーデザイナーであることに嫉妬していたからだ。 それがどうしたというのか? ローズはエミリーの降格を知って笑いが止まらない。 これからエミリーは自分の命令に異を唱えることなく従わなければならない!そう想像すればするほど、ローズのニヤニヤは止まらない。

さっそくローズは行動にでた。わざとエミリーに多くの仕事を振り分け、エミリーは残業を強いられることとなった。

やっとエミリーが仕事を終えると、時計は午後9時になろうとしていた。 エミリーが退社しようすると、すでに社員全員が退社しており、自分が最後の1人だということに気づいた。

エミリーがバッグを持ち退社しようとすると、どうやらオフィスのドアが外からの施錠されているようだった。

ローズの仕業であることに疑いの余地はなかった。

そして突然”ポン”という音がすると同時にエミリーは息をのんだ。その音とともに、 オフィス全体の明かりが消え、オフィス内が暗闇に包まれたからだ。

エミリーの血の気が引いていく。 彼女は暗闇にトラウマがあった。幼い頃誘拐された経験があり、暗闇はその経験を思い起こさせた。エミリーは子どもの頃から暗闇に対する恐怖に苦しんできた。

ローズはエミリーのトラウマをもちろん承知していた。

目が慣れてもオフィスは暗すぎて何も見えなかった。 エミリーは冷静に深呼吸をしてパニックにならぬように落ち着き、自分のバッグからスマートフォンを取り出してアドレス帳をタップした。

エミリーはとりあえず何名かの同僚に助けを求めたが、同僚らはまるで判を押したような同時言葉をエミリーに言い電話を切った。 同僚への根回しも、ローズの関与を否定する余地はなかった。

エミリーは友達が少なかった。運の悪いことに、その数少ない友達も、皆、バラバラかつ遠方に住んでいた。

エミリーの頭にジャックの名が浮かんだ。もちろん彼女はためらった。しかし、それでもジャック電話をかけ、 少しでも昔の恋人を思い助けてくれることにエミリーは一縷の望みをかけた。

しかし一縷のその望みも一瞬で消え去った。ジャックの電話にでたのはローズだった。

ジャックを呼びながら、ローズは喘ぎ声のような吐息をもらしていた。もちろん、ローズはエミリーを挑発し、 ジャックとの関係の深さを見せつけようとしている意図もエミリーは感づいていた。 エミリーの耳にはまた、ローズの声のうしろからジャックの喘ぎ声も聞こえていた。

2人の声に嫌気がさしたエミリーは、嫌悪感を抱きつつ電話を切った。

やはりジャックに助けなど求めるのではなかったとエミリーは後悔した。

少しの間、そんなことを考えていたエミリーだったが、壁に腰を下ろしたはいいがこれ以上誰に助けを求めるべきかもわからぬまま、電話だけをしっかりと握りしめていた。

エミリーはオフィスを乗っ取った暗闇と不気味な静けさに心が負けそうだった。 刻々と時が過ぎるほどに恐怖が彼女の心を占めてゆく。 幼い頃に負った心の傷は、エミリーに暗闇に対する恐怖という後遺症を与え、 これまでに何度もエミリーはこの恐怖に苛まれてきた。まるでエミリーを乗っ取るかのような絶望感と恐怖心が彼女の心を占めてゆき、呼吸困難にまで陥った。

「ダメだわ。これ以上ここにいられないわ…。」 エミリーの額から、ビーズのような玉の、変な汗が流れ始めた。動揺が強くなる。 エミリーは「ヤコブ」という名前が現れるまで、スマートフォンを握りしめながら、画面を上に下にスクロールするのだった。

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1 第1章針小棒大に考えるな!? 2 第2章怖いもの知らず3 第3章言われて当然4 第4章首元のキスマーク5 第5章闇が襲う6 第6章先に私を誘惑したのは君だよ7 第7章なんて馬鹿げた考え8 第8章よくも彼女に触れたな9 第9章セックスフレンドをかくまっているんだろう10 第10章なぜまだここにいるの? 11 第11章まだ君には学ぶべきことがあるようだ12 第12章ゴミ以外の何ものでもない13 第13章エミリー、出ていけ!14 第14章愚かなる人15 第15章おめでとう16 第16章あなたはクビです17 第17章片手だけでは拍手はできない18 第18章彼は彼女を許すつもりはない19 第19章決して裏切らない20 第20章あなたと遊んでいる暇はないの21 第21章約束を反故にするおつもりですか? 22 第22章虎の威を借る狐23 第23章さっきのキス10万元だ24 第24章あなたが倒産するまでキスするわ!25 第25章恥ずかしくないの? 26 第26章真実が明らかに27 第27章謝罪28 第28章私は食べ物には好き嫌いがない29 第29章どうして言うことを聞かないんだ? 30 第30章おとなしくして食事をきちんととって31 第31章私にキスして32 第32章白昼夢33 第33章初心だけどすごくかわいい34 第34章本気で言っているの? 35 第35章唐辛子スプレー36 第36章どんな違いがあるの? 37 第37章善は急げ38 第38章禁断の恋愛みたいじゃない? 39 第39章お願い、行かないで40 第40章私とキスしたい? 41 第41章あなた次第42 第42章俺じゃない43 第43章キスをして44 第44章私は必要ないって? 45 第45章俺に連絡を取るのはやめてくれ46 第46章彼らに騙された47 第47章企みとは何だったのか48 第48章彼女の情け深い心49 第49章自然災害50 第50章彼はいったい何者か51 第51章もし私たちが死ぬのなら、一緒に死ぬんだ52 第52章嘘ばかり53 第53章俺を遠ざけようとしているのか? 54 第54章痛みで死んだらどうなの? 55 第55章約束するわ56 第56章エミリーはどうなった? 57 第57章助けてくれた人間を簡単に見捨てる能力58 第58章俺も寝たきりだった59 第59章抱きしめさせて60 第60章おいしかった? 61 第61章美しいもののために死ぬのが本望なんだ62 第62章エミリーさんも宴に参加するようです63 第63章同じドレス64 第64章私の無礼を責めないでちょうだいね65 第65章君は下品なままだね66 第66章脚を折るからね67 第67章お互いだましあって68 第68章結婚? 69 第69章ひざまずいて謝罪70 第70章それか今すぐ出て行け71 第71章あなたに失望した72 第72章病気になったヤコブ73 第73章誰が私に触れて良いと言った? 74 第74章おめでとう、あなたの勝ちよ75 第75章ジャック、私たちは終わりよ76 第76章このお兄ちゃんと遊ぶといいよ77 第77章あとくされなくわかれる78 第78章愛人は誰? 79 第79章慰謝料として1000万円払うか80 第80章会いたくない人に限ってよく顔を合わす81 第81章妊娠しているの? 82 第82章君は中絶するべきだ83 第83章その子の父親は私でなければいけない84 第84章思い切って私をふってみる? 85 第85章君はわざとだよな? 86 第86章とっても可愛らしい87 第87章彼女のことはエミリー様と呼びなさい88 第88章馬鹿とは話をしたくない89 第89章私の女の周囲を嗅ぎまわるとはな…90 第90章私を怖がらせようとしているのか? 91 第91章私たちの子供には君みたいに鈍くなってもらいたくないからね92 第92章私の施しだわ、分かる? 93 第93章もうあなたのことは愛していないわ94 第94章赤ちゃんが本当に動いている!95 第95章私がふさわしいというなら、ふさわしいんだ96 第96章画鋲97 第97章ヤコブになんかもったいないんだ98 第98章頭がおかしくなった99 第99章胎児教育100 第100章妊娠していないの?