甘やかされた女
ジャックはエントリーしたデザイナーの反対側に座わり 、目の前で繰り広げられる混乱を楽しんでいるかのように、腕を組み口角をあげていた。
「エミリー、君は俺なしでは何もできない。 この状況を君1人で打破することは無理だ」
審査員の1人がローズとエミリーをステージに来るように言うと、会場内の人々はすぐに警備員からスペースをあけるように指示された。 その男性審査員はエミリーのことを疑っており、既に彼の中ではローズが勝者となっていた。
「エミリーさん、 何か言いたいことがありますか?」 その男性審査員はエミリーにたずねた。
「はい!」
エミリーはそう言うとビクターをチラリと見た。 ビクターは顔面蒼白で審査員席に座っていた。それからエミリーはゲスト席に目を向けた。いつものように感情を決して外に出さないポーカーフェイスのヤコブの姿を見つけた。 「彼らの目にも私は盗作デザイナーとして映っているのかしら?」と、 エミリーは疑いの目でゲストたちを見渡した。
会場内の注目を一身に受けていた エミリーは、自分の無実を主張する気概に満ちていた。 無実を晴らすために、彼女は戦うことを選んだ! ローズの三文芝居や誹謗中傷に屈するつもりなどなかった!
エミリーは大きく息を吸ってから大きく息を吐き、落ち着いてからローズの方を向いた。 そして低く冷静な声でローズに尋ねた。 「ローズさん、あなたはこのブローチのデザイナーですか?」