甘やかされた女
すべてがすんなりとクリアになった。 アンダーソンは直近10年間、ゴーストライターにデザインを依頼して仕事をしてきた。つまり、アンダーソンのここ10年間の作品すべて、他のデザイナーによってデザインされた作品だったということが暴露されたのだ。 さらに、彼が今しがた行った行為から見るに、才能ばかりか、道徳心もないことが明らかとなった。 上っ面の褒め言葉や名声のために他人をだまして名誉を傷つけた男を誰が信用できるだろうか。
「それをどこで聞いた!!」 アンダーソンは青ざめていた。
アンダーソンは自国での除名処分をうまく隠蔽し、そのニュースが業界内で広まる前にもうひと儲けしようと思っていた矢先のジャックからの依頼。そんな状況下であったアンダーソンはジャックからの依頼を承諾し、ローズの偽証に加担した。 が、それはアンダーソンに大きな誤算だった。業界人が多く集まるこの場で、ましてや若造のビクターに除名処分を暴露されようなど思ってもいなかった。
「ジュエリー界からアンダーソンを追放だ! ローズもだ!」
すぐに、審査員たちはローズのエントリーを無効とした。 四方八方から飛んでくる怒りと怒号に溺れそうになったアンダーソンは、この上ない屈辱に耐えられることなどできず、小さくなって会場から逃げ出した。