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第6章罰
文字数:3594    |    更新日時: 20/02/2021

マリアはボトルをひっくり返すと、グラス使わずボトルから直接お酒を飲んだ。 高く上げられた彼女の頭には、イヤリングが光で輝やいていた。 しかし、ボトルからこぼれた半透明の液体は彼女の美しい首筋を通って、キャミソールの中に消えていった。

その瞬間の彼女はとても熱く見えた。 パーティーに参加している男達は目を離すことができず、唾を飲み込み、ネクタイを緩めた。

[くそー! 彼女がシーさんと 結婚したのもうなずける。 彼女は本当にやばい」

ボトルを一本飲み終えても、 マリアの足元は、まだフラついてはいなかった。 手に持った空のボトルを振って、マリアは部屋全体に響き渡るげっぷをし、ジェームズの目を見た。 「誰か水を持ってきてちょうだい」

楽しそうにしていたステラは、浮かない顔をした。 「マリア・ソン、あなた正気? シーさんにあんな風に 命令するなんて!」

テーブルの前にしゃがみ込んだマリアは、あごをボトルに置き、首を傾けてステラを見た。 「あれ、私そんなことを? なんてこと! 本当にごめんなさい。 シーさん お願いします……」 再びげっぷがでそうになり、彼女の動きが止まる。 「…… 誰かに水を持ってきてくれと頼む?」 彼女は酔っ払っているようで、思考もぼんやりしていた。

彼女を見つめるジェームズの目は冷いものだった。 「続けろ」

「わぁ、 あなたは本当に意地悪ね!」 まるで子供が可愛く遊んでいるかのように、口を尖らせ、マリアは不平を言った。 それから彼女は二本目のボトルを開け、 立ち上がって深呼吸をすると、ボトルを一気に逆さにした。 彼女は喉を上下に跳ねさせながら、ボトルを飲み干した。

アリーナはまったく幸せを感じられないでいた。 それどころか彼女の感情はとても複雑で、 うまく言葉にするのは難しかった。 ジェームズはマリアをからかってるのを見て、 彼女は嬉しいと思うはずだったのに。 実はそうではなかった。

アリーナはしばらく頭を下げて考えた。 そうか! ジェームズはマリアに注目していたのだ。

そして、部屋にいる全員が見守る中、マリアは三本目のボトルを飲み干した。

空のボトルを三本並べ、周りに「すみません。 ちょっとお手洗いに」と言った。 彼女は速足で歩いたが、それでもよろけてしまい、壁を支えにしていた。

化粧室に駆け込んだマリアは、はじめのうちはきちんと歩くことができなかったが、少し時間をとることで酔いが落ち着いてきた。 彼女は壁にもたれかかり、息も切らしていた。

ジェームズはそのようなろくでなしであった。 少し口を滑らせただけで、彼女はハードリキュールを三本飲むはめになった。 彼女はジェームズとの接触に成功したが、激怒した。 屈辱である。

この時点で、彼女の胃は反抗していた。 飲んだものが逆流し、嫌な味が彼女の口を満たす。 マリアはそれすべてを 吐き出した。 そして、やっと化粧室から出てきた彼女は混乱していて、 目にはまだ涙が残っていた。 それは彼女の心が壊れてしまったせいなのか、それとも飲み過ぎたせいなのかは分からなかった。 とにかく、彼女の目には涙が溜まっていた。

片付けを終えると、マリアは個室に戻った。 ジェームズとアリーナは去り、他の皆も外に出ていった。 楽しい余興が終わり、パーティーはもう終わりという空気が流れていた。

個室に戻ると、マリアはハンドバッグを取ろうとすると、 ステラがそこで待っていたのに気づいた。 彼女を見ると、ステラは嘲笑った。 「あなたは本当にできないことをしようとするのね。 まだシーさんを誘惑 しようとしてるの? あきらめなさいよ。 彼があなたみたいな人殺しと付き合うなんてありえないわ」

「マリア・ソンは、6年前から変わらず臆病のままだ。 彼女の息子は彼女のせいで死んだ。 だから、ジェームズが彼女と再婚することはない」とステラは考えていた。

マリアはステラの辛辣な言葉に何も言わなかった。 吐き気が再び彼女を襲い、壁にもたれかかった。 その額には冷や汗が浮かんでいた。 彼女が腹痛で気絶しそうになっていなければ、彼女はステラを離すことはなかっただろう。 あのうるさい女は、一晩中彼女を怒らせようとしていた。 彼女は一線を越えてきたが、マリアは何もできなかった。

マリアが壁に寄りかかって何も言わないのを見ると、 ステラはドレスを片付け、財布を持つと、勝ち誇ったような笑みを浮かべて帰っていった。

ステラが出て行くとすぐに、マリア寄りかかっていた壁から滑り落ち、倒れた。

胃が誰かに蹴られたような感覚を覚え、再び胃の中のものが再びせり上がってきた。

マリアは何度か深呼吸をして、吐き気を抑えようとしたが、 こらえきれずに吐いてしまった。 しかし、吐き出されたものは食べたものではなく 血だった。

弱りながらも、彼女はハンドバッグから携帯電話を取り出した。 しかし、彼女が電話する前に部屋のドアが開けられた。 そこにはアリーナが立っていた。 彼女は帰ったのではなかったのか。

マリアと床の血を目にして、彼女は一瞬ぎょっとしたが、すぐに何が起こったか理解できた。

アリーナはゆっくりと倒れ込んでいるマリアのところへ歩いていくと、 何も言わずにヒールでマリアを腹を蹴った。

大きな衝撃がマリアを襲い、 うめいた。 彼女の顔からは血の気が引いていた。

再び彼女は吐血した。 あまりの胃の痛みに彼女はめまいを起こし、 冷や汗が彼女の身体と服を濡らした。

アリーナは部屋に車の鍵を忘れたから戻ってきたのであって、 弱り切っているマリアを発見することは想定外であった。 この好機を利用した後、彼女は近くのテーブルから車の鍵を取ると、踵を返した。

ノーマンがマリアを見つけたときは、彼女は床に横たわっており、手を挙げることすらままならないほど弱っていた。 ノーマンの姿が見えると、彼女は弱々しい笑顔で「こんにちは、ノーマン。 お邪魔してすみません」と挨拶をした。

彼女は一晩中気を張っていたが、 緊張の糸が途切れ気絶してしまった。

ノーマンは彼女を抱きかかえた。 彼女をできるだけ早く病院に連れて行く必要があった。

ナイトクラブの外で、マリアを腕に抱えたノーマンは、偶然にもジェームズとアリーナにぶつかってしまった。 二人がが車に乗り込もうとすると、ジェームズのアシスタントであるサマー・ジンの挨拶が聞こえてきた。 「こんばんは、 シェンさん」

ジェームズとアリナはその声に振り返り、 ノーマンの腕の中にいる女性に注目した。

マリアのシャツについた血が、星明かりに照らされて輝いていた。 シャツも汗で濡れていた。 彼女はひどい顔をしていた。 ジェームズは無視をしていたが、アリーナは心配そうな表情をした。 「あらまぁ! シェンさん、 可愛そうに、マリアに 何があったの?」

ノーマンは立ち止まることなく、横にいる無表情な男を横目に見て、「わからない。 でも早く病院に連れて行かないと。 失礼します」

それを言って、彼は急いで車に乗り込んだ。

二人はすぐに出発した。 アリーナはジェームズに目を向けた。 「ノーマンはマリアをとても大切にしていると思うの。 彼女は私の従姉妹だし、 そのことを喜んじゃダメ?」

彼女の質問に答えることなく、ジェームズは黒いハーキムに乗り込んだ。

アリーナは彼の態度に慣れていた。 ジェームズは口数の少ない男だった。

少なくとも誰に対しても同じような態度だった。 アリーナはそう感じていた。

翌朝、HLグループで、

若い男が社長室の近くの廊下を歩いていた。 彼は、オレンジ色のキャラクターが描かれた白いプリントのTシャツにオレンジ色のカジュアルパンツ、そして、スケートボードの靴を履いていた。

彼はポケットに手を入れて、そのフロアの秘書達に向かって狼のような口笛と猫の鳴き声を繰り返していた。

従業員全員が立ち上がって、「おはようございます。 ナンさん」と挨拶をした。

「ナンさん、 お元気ですか?」

イーサン・ナンは顔を上げてそれらに応えた。 そして、「サマー、ジェームズはそこにいるのか?」と尋ねた。

サマー・ジンは微笑むと 「はい、 ナンさん。 シーさんは 会議を終えたところです」

「ありがとう」 イーサン・ナンは早足で、ノックすることもなく社長室の扉を開いた。

ノックせずにジェームズのオフィスに入ろうとする人はH市にはほとんどいなかった。 イーサン・ナンもその一人だった。 彼はジェームズの親友であると同時に、H市の金持ちの家に生まれた手に負えない男でもあった。

ジェームズは窓の傍に立っていた。 扉の音が聞こえ、振り返ると元気な若者の姿が目に入った。 「イーサン、六十六階に着くのに十分もかかっている。 階段でも 使ったのか?」

イーサンは大げさに鼻を鳴らし、ため息をついた。 「君のところの受付嬢はとても綺麗だね。 彼女たちと話さずにはいられなかったよ。 それに一階にいる僕が見えたなんて、君はかなり目がいいんだね」

イーサンの笑顔を見て、ジェームズは無言で 手に持った双眼鏡を振った。 なぜ一階にいるイーサンがみえたかは明らかだった。

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