~愛·裏切り·復讐~元妻の甘い誘惑
作者保泉 勝文
ジャンル都市
~愛·裏切り·復讐~元妻の甘い誘惑
早朝、マリアや他の従業員達は急いで出勤していた。 長いウェーブのかかった髪を振り乱し、彼女は一階にあるHMグループのエレベーターに向かって走る。
エレベーターが閉まっていくのを見て、彼女は「待って!」と叫んで、 エレベーターが上に行かないよう、ボタンを押した。
エレベーターには三人乗っていた。 四十代前後の男性が前におり、その後ろに秘書と思われる人物が二人立っていた。 三人ともマリアを見つめていたが、彼女はその視線にも気まずい雰囲気にも気づいていないようだった。 彼女は申し訳なさそうな笑みで、「ごめんなさい、仕事に遅れそうだったので」と言った。
彼女はハイヒールでエレベーターに乗り込み、振り返ってドアを閉めるボタンを押した。
そして次に、彼女は秘書部門のある二十二階のボタンを押した。
後ろに立っていた女性は沈黙を破り「あなたはどの部署から来たの?」と問いただした。
マリアは訳も分からず彼女の方を向いた。 「私ですか?」
女性は怪訝な表情うなずいた。
マリアは長い髪をなびかせ、丁寧に答えた。「私は秘書部門の者です。 最近入ってきました」
女性の疑惑が晴れたようで「そうですか。 次からは気をつけてください。 これは社長専用のエレベーターです。 普段は使えません」
「えっ! それは本当に申し訳ありません。 教えてくださってありがとうございます」 マリアはショックのあまり口を手で覆った。 エレベーターを再び沈黙が包む、マリアはしばらく考えてから、正面に立っている男性に視線を向ける「すみません。 もしかして HMグループ社長のツェンさんですか?」
男は目を細めてうなずいた。 「気にしなくていい。 君は知らなかったんだ。 次から気をつけてくれ」
マリアは手を下ろし、もう一度魅力的なな赤い唇を露わにすると、感嘆の声をあげながら彼を見た。 「ツェンさん! なんて素晴らしい人なの! それに、こんなに若いとは思っていませんでした! こんな大企業を経営しているのはいつも五十代を超えるような人だと思っていましたが、あなたは三十代前後のように見えます。 なんてすごいの!」
彼女が意図的にコルビー・ツェンをおだてているのは明らかだったが、まるで本当のことを言っているかのように自然に聞こえた。 それに、マリアは魅力的な女性だったので、彼女の言葉はコルビーにとって嬉しいものだった。
コルビーは笑った。 「ありがとう。 お世辞抜きで嬉しいよ。 PR部門で働いてみないかい?」 コルビーは目の隅で上下に視線を動かし彼女を見ると、彼女が素敵な曲線を描いていて、とても魅力的だと思った。 彼女が実際にPR部門にいないのは非常に残念だった。
マリアはうなずくと、頬を赤らめた。 もう少し言いたいことがあったが、まもなく二十二階に着きそうだったので、できるだけ短くまとめた。 「ツェンさん。 乗せてくれてありがとうございます。 あなたの時間を無駄にしかなかったことを願ってます。 二度とこんな間違いは犯しません。 会社に少しでも貢献できるよう頑張ります! 失礼しました」
コルビーは彼女の誠実な言葉に喜んでうなずいた。 「いいね! 期待してるよ!」
ハイヒールを履いたマリアは優雅にエレベーターを降り、すぐに三人の視界から消えた。
エレベーターのドアが再び閉まると、マリアの笑顔は徐々に薄れていった。 コルビーの妻は二十代だという噂がある。 お金のためでなければ、なぜそのような若い女性が醜い老人と結婚するのだろうか?
「それは本当の愛なの? ああ、本当に、 理解ができない!」 マリアの唇は丸くなり、嘲笑った。
マリアは一度、裕福な家族の視点からいわゆる真の愛を経験し、トラブルに巻き込まれた。 そのため、マリアは自分自身に、「あなたが世界で最も愛し、大切にすべき人は自分自身である!」と言い聞かせていた。
借りたい店のオーナーと会うことに二回も失敗したアリーナは、ミラクルコーヒーで三度目の面会を望まなかった。 その代わり、彼女は自分の家で面会をしたかった。
しかし、オーナーは彼女に、秘書部門で働いているHMグループで会えなかと言ってきた。 H市では、タングループとHMグループは同じくらいの影響力を持っていた。 なので、アリーナがオーナーの地位や給料を把握するのは難しくはなかった。 彼女は困惑せずにはいられなかった。 なぜ中央ビジネス地区に店を持つ女性がその賃貸で住んでいないのか? どうして彼女は決して高いとは言えない給料の仕事をしているのか?
それが理解できないまま、アリーナは予定通り秘書とともににHMグループに向かった。 再び約束をすっぽかされるようなら、彼女は間違いなくオーナーを苦しめるだろう。