玉座についたヒーロー
作者上沼 鏡子
ジャンル冒険
玉座についたヒーロー
アルストンは、スーパーナルステージ3等級のスピリットマニピュレーターで、 聖ドラゴン帝国の若い世代では最上位にいた。 12歳のときにドラゴンスピリットビーズからドラゴンスピリチュアルパワーを獲得することに成功したのだが、 そのような幼い年齢でロイヤルスピリットマニピュレーターになるのは非常に稀だったので、 国民の誰もが彼には天賦の才能があると思った。 アルストンは30歳だったが、生涯にわたって懸命に働いてきた多くのベテランスピリットマニピュレーターをしのぐパワーを持っており、 彼が最優秀であることは否定できなかった。
その一方、ロッキーは、聖ドラゴンビーズからドラゴンスピリチュアルパワーを獲得したにもかかわらず、モータルステージ1等級にさえ達していなかったので、 アルストンと比べると、無能なスピリットマニピュレーターにすぎなかった。
だから、ロッキーがいつかアルストンを超えるパワーを身につける可能性があるなどと誰も考えられず、 彼がどれだけ長時間訓練し、どれほど一生懸命働いても、決してアルストンのレベルに達することはないと思われていた。
なので、彼のばかげていた言葉を聞いて、 ホールにいた人々は狂人を見るような目で彼を見ていた。
アルストンも軽蔑的な微笑みを浮かべるだけで、 全く意に介さなかった。 結局、ロッキーは彼にとって何の価値もなく、 彼はこの哀れな兄弟にこれ以上無駄な時間を使いたくなかったのだ。 またロッキーに冷たい視線を送り、アルストンはすぐに去っていった。
他の王子たちも、苦々しげにロッキーを見て、アルストンに従い去っていった。
「見てろよ!」 ロッキーはアルストンの背中を見ながら怒り、つぶやいた。 歯を食いしばると、急に怒りがこみ上げた。
アルストンの出発をもって儀式は終了し、他の王族たちもグランドドラゴンホールを去っていった。
「諸君! 最後の者以外は私についてきなさい!」 司祭長はドラゴンスピリチュアルパワーを獲得した29人の若者の前を歩きながら言うと、 若者たちをちらっと見て、そしてロッキーの方を向いて、彼を睨みつけた。
その後、司祭長はグランドドラゴンホールを出て、29人の若者がその後に続いた。
ロッキーは列の最後尾につけて、どうすればもっと強くなることができるか物思いにふけった。
ロッキーが去った後、シャーリーは彼がいた場所に行き、拳を握りしめ、 彼の背中を睨みつけながら、「あのくそったれ! 聖ドラゴンビーズからドラゴンスピリチュアルパワーを得たけど、それがどうしたというの? 彼はまだ役立たずだし! 何も変わらない! でも、今は面白い方向に進んでいる。 将来、彼にいい教訓を与える機会が増えたんだから。 お前はすぐに私に言ったことを後悔することになるわ、このくそったれ!」と言った。
ロッキーと29人の若者は、司祭長に従いホールを出た後、数台の大きな馬車に乗り込んだ。
時間を無駄にすることなく、彼らはすぐに出発すると、 しばらくして、目的地に到着した。
多種多様な立方体で構成された独特のデザインの建物がロッキーの視界に入ってきた。 彼と若者たちは司祭長の後に続き、その建物に入っていった。
彼らが門に足を踏み入れると、すぐに彼らの鼻は悪臭に襲われた。
匂いを嗅ぐと吐きそうになるので、 彼らは鼻を覆うしかなかった。 しかし、ロッキーは全く苦にならなかった。 悪臭は明らかに動物とその糞から出ていたが、 動物遺伝子研究分野の学者として、ロッキーはそんな匂いには慣れていて、とっくに鈍感になっていた。 彼の研究では、そのような環境に行くことは当然であり、 何年もの間そんな匂いの中で働いてきたのだから。 そして彼は匂いを判別できたので、そこには何十匹もの動物が住んでいることさえわかった。
彼の判別は正しかった。 門の後ろの長い廊下を歩いていると、唸り声や鳴き声が空中に響き渡った。
廊下が終わり、円形の広々としたホールに出ると、 その周りに厩舎があり、それぞれがケージと同じサイズだった。 薄暗い光の下で、厩舎にいる動物の姿がぼんやり見えてくると、 大きさや高さが多種多様で、 閉園後の動物園のようだった。
すると、一人の中年の男とその部下が現れ、挨拶に来た。 彼の衣服から、彼が古代の役人であり、ここを担当していることをロッキーがはっきりとわかった。 彼の思った通り、その中年の男は確かにビーストの飼育係だった。
「閣下!」 飼育係は司祭長に丁寧にお辞儀しながら挨拶した。
彼の部下も司祭長にお辞儀をした。
「準備はどうだね?」 司祭長は横柄な態度で尋ねた。
「すべて完璧です、閣下! 30人のロイヤルスピリットマニピュレーターが選べるように、108匹のウォービーストをご用意しました」と、飼育係は帽子を手に答えた。
司祭長はうなずき、ロッキーと若者たちの方を向くと、 声を張り上げた。「よく聞くんだ! ウォービーストを選ぶのに1時間しかない。 気に入ったものの番号を覚えておき、 そして、時間になったらここに戻ってくるように。 では行きなさい!」
彼の話が終わるとすぐに、29人の若者は厩舎で元気に動き回り、 ウォービーストを選び始めたが、ロッキーはまだそこに立っていた。
「なぜ君はまだここにいるのかね? 行きなさい!」 司祭長はロッキーを睨みつけて大声で言った。
「わかりました!」 ロッキーはしぶしぶ厩舎まで歩きながら、口をゆがめた。
すると、厩舎に近づくと、彼は面食らった。 奇妙で巨大なビーストでいっぱいで、 どれも恐ろしいものだったのだ。 目が1つしかないウォービーストが1匹、 そして、その隣のビーストには頭が2つあった。 2つの厩舎を通り過ぎると、尻尾を2つ持つビーストがいて、 ワシの顔をしたヘビとライオンの頭を持った鹿にはさらに衝撃を受けたのだった。
「過去に飼っていた動物たちが恋しくなるよ。 現代の動物はなんてかわいいんだろう。 なぜいわゆるウォービーストはどれも見た目が奇妙なんだろう? 遺伝子の突然変異によるものかな? とにかく新しい研究を始める良い機会だ」とロッキーはつぶやき、 1つを選ぼうと探し始めた。