替え玉の花嫁
作者羽間 里絵子
ジャンル恋愛
替え玉の花嫁
ライアンは、美味しい料理と心地いい音楽のレストランを選んだ。 ステージでは歌手が歌っており、素敵な雰囲気だった。 若いアーティストが集まるY市では有名な店で、 食事をしながらショーを見ることができるから、 ナイトライフを経験したことがない人はよく来ている所だった。
同僚たちは会話や噂話をし始めた。 彼らは有名人のスキャンダルから良いスキンケア製品の事まで、何でもかんでも話していた。 しかし、オータムはそれらには全く興味はなく、静かに歌手を見つめていただけだった。
ステージ上の彼の声はハスキーでありながら心地の良い声だった。 無意識のうちに聞き惚れるような声だ。
オータムの目がその歌手に強く惹かれており、 背の高い男がドアから入って来たことにさえ気づかなかった。 彼はレストランを見回し、オータムを見つけてから歩き始めて、 レストランの隅に座った。
周りが騒がしくしているにもかかわらず、オータムは静かに座っているのが見えたところだった。 彼女は歌に聞き入っているようだったが、上の空で 周りの会話に入りたくなさそうだった。 大勢の人の中、彼女はひと目で見つけるほど変わった存在だった。