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第9章レッドダイヤモンド
文字数:5314    |    更新日時: 08/04/2021

「いらっしゃいませ」

ジュエリーショップの店員が笑顔でローラを出迎え、カウンターに案内した。 「こちらのダイヤモンドの指輪は、国際的なジュエリーデザイナーGL氏の最新作で、 まさに昨日、届いたばかりのお品ですわ。 こちらの指輪には世界で最も希少と言われているレッドダイヤが使われておりまして、多くの国際的な賞を受賞しております。 レッドダイヤは世界でたった3つしかございません。1つはデザイナーのGL氏が彼の妻に贈ったもので、1つはA国にございまして、最後の1つがこちらとなっております。 この赤いダイヤの指輪は、当店の宝となっております。 この指輪の詳細につきましては、こちらをご覧くださいませ」 と、ジュエリーアドバイザーという肩書の女性店員はローラに最新作かつ最も高価なダイヤの指輪を興奮した様子で紹介した。

確かに、このダイヤの指輪は、他の輝くだけの色付きダイヤとは違っていた。 小さなダイヤの輪で10カラットのレッドダイヤを囲むデザインで、その指輪のエレガントさ、高貴さと華美さを引き立てていた。

「ハリー、この指輪を買うっていうの?! 呆れるわ。私、この指輪が欲しいなんて言ってないし、必要だとも思っていないわよ!」

「いいから、つけてみろ」

ローラの言葉も機嫌も気にせず、ハリーはローラの手をとってそのレッドダイヤの指輪をローラの指にはめた。 ピッタリだった。 それにはローラもびっくりだ。

その指輪はローラの左手の薬指におさまっている。レッドダイヤモンドの美しい輝きは都会に生きる女性の白く手入れの行き届い繊細な手に、洗練された優雅さを纏とわせた。

「そのまま、はめたままでいいよ。 この指輪、このカードでお願い」 ハリーは財布からカードを取り出して、ためらわずにアドバイザーに渡した。 アドバイザーも驚いた。 何とクールな男だよ! 価格も見ずにレッドダイヤを買うなんて!!

「お客様、こちら、30億円となります… えっと…このカードで大丈夫でしたら、カード決済端末を取りに行きますが、よろしいでしょうか」 こんなにも高価なジュエリーが簡単に売れるなんて嬉しくてたまらないが、平穏な口調でしゃべれるためにアドバイザーは興奮を抑えるようとした。

「あぁ、そのカートでお願い」 その簡潔な答えに驚いたアドバイザーはカード決済端末を取りに急いだ。

「待ちなさいよ!」 ローラの声に店員の足もとまった。 ハリーは頭がおかしいのか? 長くは続かないかもしれない彼らの形式上の結婚に、 30億円のレッドダイヤの指輪を買う必要はまったくないのだ。 彼は、彼女にそんなにお金をかける必要はなかった。

「早くしろ」 ハリーは客席から立ち上がって、パスワードを入力するために支払いカウンターまで店員に続いた。

「ハリー...」 まだ指輪を買うことに不満そうなローラにハリーはキッと鋭い視線を飛ばした。

その鋭い眼差しに、さすがのローラもそれ以上は何も言えなくなった。

なんて自己中で 横暴なの! 人の話も聞かない! わがままにしてもたいがいにしろよ!

ジュエリーショップを出て駐車場へと降りるエレベーターまで、ローラは5㎝ヒールを鳴らして怒りを露わにしながらハリーの前を歩いた。 静かな8階にローラのヒールの音はきれいに響き、同じフロアの人の目を引きつけた。

ハリーは少し速足でローラの背を追った。そのあからさまに怒っているローラの背中を見て、ハリーの気持ちは可笑しくなり、声を殺して肩を震わせた。

エレベーターの中はハリーとローラだけだった。沈黙がつづく。 エレベーターの扉が地下の2階で開くと、ハリーはグイッとローラの手を取り車に向かった。

もちろんローラは振り払おうとした。 しかし、ローラが振り払おうとすればするほど、ハリーはギュッとローラの手に力を込めた。 ローラはあきらめた。

そのかわりに、ローラは車の後部座席にドカッと座った。

「助手席においでよ」 淡々とハリーは言った。

「嫌よ!」 ローラはシートに身を預けると、目を閉じてミラー越しでもハリーと目が合うことを避けた。

「嫌だって? そっちに座ったということは、もう1回、カーセックスしたいってことかな?」 ハリーはラジオをつけて言った。ゆっくりとした音楽が流れはじめた。 すると、ローラは助手席のドアを開け、ちょこんと座った。

ハリーは微笑んで車のエンジンをかけた。

ハリーに出会う前のローラは無数の星に囲まれた月のような女王様で、誰も彼女の言いなりになっている。 彼女を怒らせる人はだれにもいなかった。 いたずらを仕掛けたり、怒らせたりするのは女王様の彼女だけができるのだ。 ローラは、まさか自分が、婚姻届を出しただけの夫に何度となく怒らせるとは思ってもいなかった。

ハリーはアクセルを踏んでエンジンをブゥンとふかしてから車を出した。 白いフェラーリとすれ違った時、フェラーリの助手席に座ったウェーブのかかった亜麻色の髪の女性は、自分がたった今、目にしたことが信じられなくて慌てて振り返った。

サラ・フーが先すれ違った一億円以上するマイバッハの助手席に座ったのは、ここ数日間姿を消していたローラだったと確認した。

「どうしたの?気分でも悪い?」 フェラーリを駐車場に停めたマイク・チーは、婚約者の表情の変化に胸がざわついた。

「…いたのよ...彼女よ…ローラよ…」 サラがマイクに強い視線を向ける中、 マイクは何も言わず、一瞬キュッと眉間に皴を寄せるとシートベルトを外した。

その名は、マイクにとって今、最も聞きたくない言葉だったからだ。 カール・リーと彼の娘は、リー・ファミリーが破産した直後に姿を消していた。 マイクは、もし、ローラに再会した時はただでは済まないと決めていた。

「ねぇマイク?ローラは今、どうしているのかしら…」 サラは車のドアを閉めながらローラを心配している素振りを見せた。

「なぜローラのことを心配するの?俺たちには関係ないだろう」 マイクはサラの肩を自分に引き寄せて、 8階に向かった。

サラは満足そうに微笑んでそう考えた。「ごらんなさい。ローラ。 あなたはついに何もかも失ったわね。 あなたが心の底から愛した人はあなたの名前すら耳に入れたくないのよ」

サラとマイクはエレベーターでまっすぐ、GL氏の作品がある8階のジュエリーショップへ向った。 GL氏がデザインしたダイヤモンドは、最近、セレブたちの間で話題になっている。 D市にはGLデザインのジュエリーを置いているショップは2店舗しかなかった。1ヶ所はここブルーアイランドモールで、もう1ヶ所はCuiweiプラザという所だった。

マイクとサラがショップに入る時、カウンターの店員らが興奮気味にして何かについて話していた。時々興奮で声をあげた。

「30億! もう!本当に信じられないわよ! 来店してわずか3分間で30億をお買い上げよ!!」 「ミス・シン、今日はなんてラッキー・デイなの!」

「しかも、超イケメンのよ あんな高いダイヤモンドのよ! あの女性は奥様のかしら? なんと美しい女性だよ。 彼女も金持ち出身だと思う。何度も来店してGLの作品を買った覚えがあるわ」

「ああ! 惜しい。 彼はもう結婚したんだ」

耳に入ってきた店員らの話を聞いたサラは、わざと咳払いをして、店員の注目を集めようとした。

「ようこそ、ミスター・チー、 ミス・フー」 この2人のセレブな客に気づくと店員らはそれぞれの仕事場に戻った。

サラはローラとここへ何度か来たことがあったから、 ここの店員が彼女の名前を知っていた。 彼女はマイクという男性と結婚する噂を聞いたことがあるから、おそらく、この結婚相手はサラの隣に立っている男性だとアドバイザーが推測した。

「先日、マネージャーから ジュエリーデザイナーGLの最新作が入荷するって連絡いただいた。 10カラットの素晴らしいレッドダイヤですってね! 見せてくれるかしら?」 サラはさらりとそう言って見せたが、2人にとってレッドダイヤの指輪の価格は大問題だ。 婚約指輪としてそのレッドダイヤの指輪を買ってもらうとマイクを説得するにはかなり時間をかかった。 そこで、今日は前受金を払うために、ここに来た。

「申し訳ございません。ミス・フー。 レッドダイヤはすでに購入されてしまいました。 よかったら、ほかの指輪を紹介させていただきます」 アドバイザーはすこしがっかりした。 なんでもっとレッドダイヤをデザインしなかったのよ!もっとデザインしてくれたら、この店の売り上げも、私の給料もあがるっていうのに!とジュエリーアドバイザーは心の中でそう思いながら奥歯をギュッと嚙みしめた。

「…もう…売られたって?!」 サラは驚いて声をあげた。 そのレッドダイヤが大好きで、 マイクの首を縦に振らせるために、自分の貯金をすべて出すから買ってほしいとマイクに懇願していたのに。

「仕方ないじゃん。サラ。 ほら、他のリングもいいじゃん」 マイクは2人の目の前に並べられたリングの価格を見ながら笑顔でそうサラに言った。 ちょうどいい。どうせ、あんな高価な指輪を買いたくないし。 それが売られたと知ってマイクは心の中で喜んでいた。

一方、もしそんなに早く売られたと知ったら、もっと早く前受金を払いに来らればいいとサラが悔やんでいる。 3日前、マイクにこれを買ってほしいと言った時、同意してくれればよかったのに。 すべてマイクのせいだ。

「はい、 以前、バースデープレゼントを取りにいらっしゃった時、ミス・フーとご来店いただいた方です。その方のご主人がレッドダイヤの指輪を購入されました。」 ジュエリーアドバイザーの言葉でサラの頭の中は真っ白になった。

「ローラって?」 聞いたことを信じられなかったサラが目を怖いほど大きくして声を上げた。

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