私の吐息を奪って
作者雪田 結梨
ジャンル恋愛
私の吐息を奪って
しかし、それでも、デビーはチャールズのしたことが許せなかった。 権力者であっても、誰も、絶対に、そんな他人を貶めて良いはずがなかった。 デビーは、そのまま黙って手を引くのができないんだ。 「私の内面に悪魔が潜んでいるのなら、私とキスしたあなたも、間違いなくキチガイだろうね」 とデビーはチャールズを見ながら、また嘲笑した。 「ってことは、もし私は死ぬべきなら、あなたも私と一緒に飛び降りて死ぬべきだよ?ね? ミスターフオ?」
事実上、彼らはまだ結婚していた。 普通のカップルだったら、そのロマンティックな響きで多くの人をうっとりさせただろう。
デビーのチャールズへの悪口に会場が沈黙に包まれた。
その場の人たちはそれぞれ何かをこっそりと話し始めた。 「チャールズ・フオにキスしたって! ?」 「さすが旦那様の前で 『一緒に死ぬ』と言った女というか ......」
その場が続く中、フロアマネージャーは、デビーに仕事を奪われるかもしれないと分かりながらも、自分の手で事を進めようとしていた。 しかし、エメットがまだ動く様子がないのを見て、またその考えを捨てた。
結局のところ、エメットはチャールズより彼自身のことをよく知っていた。
キス。 その言葉がデビーの口から出ると、オルガは唇を噛みしめデビーを睨みつけた。 もし可能なら、オルガは今デビーの服を剥ぎ取りサメの餌にでもしたい。 オルガの祖父がいなければ、チャールズのそばにはいられなかっただろう。
「私でさえも彼にキスをしたことがないのに!」 とオルガは悔しさのあまり、心の中で悲鳴を上げながら自分に言った。 「チャールズと腕を組むようにお願いするだけでも勇気がいるのに、この子は! この子は彼にキスをした!」
最終的に、エメットは感情を抑えきれず、両手で顔を覆い、言葉を失った。 デビーの方が無知なのか? シャイニングインターナショナルプラザは間違いなく旦那様のものだぞ! フオと離婚はまだ成立していなかったので、チャールズとデビーはまだ夫婦と見なされていた。 法的に言えば、チャールズの物は何でも、デビーの物と言うことになる。
その時、ケイシーはチャールズに目を向けた瞬間、最高のスマイルを浮かべて彼を見つめていた。 興奮してドキドキし、ケイシーの体は熱くなった。 神は、彼女は食事を見ているのを知っていて、それがむさぼり食われるのを待っているだけだと知っていた。 デビーの最後の発言を聞いてからこそ、ケイシーはようやく自分の下劣な考えから現実に戻った。 咳払いをし、ケイシーはやや躊躇しながら事実をデビーに教えた。 「ねえトンボーイ、シャイニングインターナショナルプラザはね、確かにミスターフオの所有物だよ。 知らなかったの?」
ケイシーがそう言った瞬間、デビーは雷に打たれたようだった。 永遠に続いているように感じた後気を取り戻したデビーは、自分の言った言葉に気がつき、呆然とした。 「も、もう一回言ってくれる?」