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私のCEOであるパパ

私のCEOであるパパ

谷田部 崇博

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彼氏と親友にはめられたニコールは、見知らぬ謎の男と一夜を過ごした。あの素敵な一夜を楽しんだ彼女だが、翌朝目が覚めると、自分のしたことに罪悪感を感じずにはいられなかった。しかし隣に横たわっている男の顔を見たとたん、すべての罪悪感が消えた。 「本当に…格好いい人だわ」彼女の罪悪感はすぐに恥ずかしさに変わった。そこで、その男に金を残され、そして立ち去った。 目が覚めたその男、カーは驚いた。「あの女、俺に金を払ったのか?俺をホスト扱いした?!」と怒鳴った。「ここの支配人を呼べ、監視カメラの映像を見せろ」眉をひそめた彼はアシスタントに命令した。「昨夜、俺の部屋に誰がいたか知りたいんだ」 —あの女を見つけたら、ただでは済まさないぞ— そして、物語はどうなるのだろうか?

第1章ハンサムな見知らぬ男

「つらい…」

少女の身体の線が細くて美しいことは、部屋の薄暗い明かりの中でも十分に分かった。 カー・グーは、ベッドのシーツの中にだるそうに横たわり、寝ぼけているその少女にすぐに気がついた。

「おい! 俺の部屋に誰がお前を入れた? !」

少女の顔はぼんやりとしていて、はっきりとは見えなかったが、美人かどうか見分けることは簡単だった。 カーはベッドに近づき、謎の少女のあごを持ち上げて顔を確かめようとした。 その瞬間、少女はベッドから飛び跳ねるようにして、彼の首に手を回して、激しく息ができないというように耳元で喘いだ。

「お願い… 私を…たすけて」

少女に抱きつかれたことと、耳元での激しい喘ぎがカーをたまらなくさせた。 もう我慢なんて無理だ!

裕福な家庭で育ったカーは、社会の闇も知ったし、裏社会のことも詳しかった。 貧しそうな少女は薬を飲まされているようだったが、楽しませてもらったとしても害はなさそうだったと彼は思った。

誰かは知らないがこの部屋に彼女を連れてきた奴は、俺に何かを求めているんだろう。 彼女に薬を飲ませたのもただ興を添えるだけだろう。 カーは口元に悪そうな笑みを浮かべながら、そんな考えをめぐらしていた。

そう考えたカーは、少女へと身を乗り出して、ためらうことなくキスした。

ジリリ… リン!

毎朝起こされている目覚まし時計の音に、ニコール・ニンはパチパチと目を開いた。 眠い目をこすりながらアラーム音を消そうとしながら、彼女はいつもと何か違うことに突然気がついた。

え? なぜ私、裸なの? そ、そして...? この隣で寝ている男性は一体誰? ! 思わず口を押えて、ニコールは自分が悲鳴をあげそうになるのをこらえた。

彼女は何があったか昨日の出来事をこめかみのあたりをこすって思い出そうとした。

ええっと… サプライズがあるから、ホテルで待ってるようにってグレゴリーが言ったのは覚えてる。 その後、フィオナが水をコップに入れてくれて… で、 それを飲んだ… その後… そうか、その時頭がくらくらし始めて、1001号室に運び込まれたんだ!

ニコールはあまりのショックに目を丸くした。 彼女の恋人であるグレゴリー・ソンと彼女の親友であるフィオナ・ジャオの関係がこのところずっと何か怪しいのではないかと疑っていたのだった。 それにしても、こんなふうに自分をはめるなんて思っていなかった!

ベッドを出て、グレゴリーとフィオナをどうしても探さなくてはと、ニコールは大急ぎで服を着た。 部屋を立ち去ろうとした瞬間、ふとベッドで寝ている男のことを思い出した。 昨夜薬でおかしくなっていたが、この男性は何度も繰り返してこんなことをしていいかと言葉をかけてくれていたことを彼女が覚えていた。それに、ここは1001号室ではなく、1101号室だと分かった彼女は、 この男性は自分と同じ「被害者」だったと思っていた。

とにかく、この人はとてもハンサム! 彼の引き締まった身体と彫刻のような顔立ちを見ながら、ニコールはそう考えていた。 まぁね… こんなにハンサムな男性としたんだったら、それほど困った状況でもないわねと、ニコールは肩をすくめた。 彼女はバッグの中からお札を出して、ベッドの脇に置いた。 そして、部屋を静かに出て行った。

無駄な時間を省くため、ニコールはタクシーに飛び乗って恋人のグレゴリーの家へと直行した。 到着したら何が待ち受けているか、さまざまな可能性が頭をめぐっていた。 ただ、到着して目にした状況にはニコールは本当にショックを受けた。

床中にちらばる脱ぎ捨てられた衣服が寝室へと続く。 その中にあった紺色のネクタイは、グレゴリーがニコールからもらったプレゼントだったが、 今は弊履のごとくぐちゃぐちゃになって床に捨てられた。

ニコールは耳をそばだてて部屋の向こうから聞こえる音を盗み聞きしようとした。 半開きになったドアからは、二人の会話や喘ぎ声が筒抜けだった。 もう我慢ならないとニコールは床にあったハイヒールを手にすると、ベッドの上の男と女へと向かって投げつけた。

「次からはせめてドアを閉めるのね、とんだ恥さらしな二人の姿を人に見せないほうがいいわよ。 でも、今後そんなことができるかどうかは知らないけどね」

グレゴリーは怒ったニコールの顔を見ると、ショックのあまりぼうっとしていた。 その反対に、フィオナは平気な顔をして、ベッドの足元にあったグレゴリーのシャツをつかんで、それを着た。 それから立ち上がってニコールの方へと近づいてきた。

「ニコール、はっきり言わせてもらうわ。 もう見られてしまったからには、隠す必要もないから。 私とグレゴリーはもう――」

「それよりも先に服を着なさいよ!」 ニコールは見るのも嫌だという風にフィオナから顔をそらせ、冷ややかに笑って言った。 「なんと目障りだな!恥ずかしいと思わないの?」

「あんたって… !」

怒りと恥ずかしさでフィオナは言葉を失っていた。 ニコールは目を細め、細い眉を上げてフィオナを一瞥した。

「グレゴリー、これが望みってわけね? フィオナなんかがタイプなの?」 ニコールは、青ざめているグレゴリーに向かってあざけるような笑みを浮かべた。

そして、フィオナに向いて「親友だから、言わなかったの。フィオナ… 気分を害したら悪いから、今までずっと黙ってた」 皮肉さを込めてニコールは明るくいい放った。 「あんたって、小さいころから私の着古した服とか、私が飽きちゃったものとか使ってたのよ。 大人になっても同じだなんて! 笑っちゃわない?」 ニコールの笑い声も皮肉たっぷりだった。 「それで、今度は私が使い古した男に手を出したってことね! いらなくなったものを拾い集める専門家ってあなたのことね!」

これを聞いたフィオナは明らかに怒りを感じていた。 彼女の父親はかつてニン家の運転手だったのだ。 だから、彼女はニコールに対する劣等感にさいなまれていた。 ベッドに寝たままのグレゴリーはゴミ扱いされたので、気分を悪くしていた。 非難するためにニコールに向かって指さし、叫んだ。「ニコール、そういうのが嫌になったんだ! うぬぼれてばかりいるところが! まだ自分のことを、ニン家の気高い娘とでも? 父親が亡くなって、君の家は破産したって忘れるんじゃないぞ! 今の君は単なる貧しい哀れな女だ。 皮肉だね、君が僕とフィオナのことを見下した物言いをするとは。 昨日の夜、お前は何をしてたって?」

これで、昨夜の一件は二人が仕組んだことだとわかった。

そういえば、確かグレゴリーはマカオでお金をすったっていってたはず。 それが家族にばれたら大変だともいっていた。 私は、借金の肩代わりにされたってこと? だけどフィオナはうっかりと違う部屋に私を入れたってことか!

ニコールはその考えに、背筋に冷たいものを感じた。 そして、彼女は皮肉たっぷりに目の前の男女を見ながら笑っていった。

「昨夜のことならすべてお話するわ! ホテルで昨夜を過ごしたお相手はすばらしかったわ。 身体も顔もとてもよく、ハンサムな人よ! 実際、あなたとするよりずっと良かったわ。 すごい経験をしちゃった!」

ニコールはグレゴリーがプライドの高い男だと知って、わざと彼を刺激しそうなことをいった。 案の定、グレゴリーは顔を真っ赤にし、ニコールを睨みつけながら、怒りで歯をくいしばりながらいった。

「この尻軽女!」

「いえいえ、とんでもない。 卑怯者としては、あなたたち二人には遙かに及ばないわ」とニコールはいい返してやった。 そして、彼女は「ふん」と鼻で笑い飛ばすと、踵を返してその場を離れた。ハイヒールでコツコツと床を鳴らし、その音は誇り高き女王を思わせた。

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