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第2章帰国
文字数:3072    |    更新日時:20/02/2021

すると、ニコールは何かを思い出したかのように、途中で立ち止まってゆっくりと振り向いた。 「あ、そうだ。マンハッタン大学から通知が来たのよ。 経営学部に入学が決まったわ。 このニュースをどう伝えるべきか考えていたんだけど、あなたたちのおかげで楽に言えるわ! あとひとつ、行く前に言っておくことがある…」

ニコールはフィオナの嫉妬に満ちた顔を楽しむように、少しの間をおいた。 「昨夜私が泊った部屋は1101号室よ」

そのあいだ、1101号室では目を覚ましたカーが、座ってベッドサイドにあるお金を不機嫌そうに見ていた。

彼はその金を数えていた。 41,827円だった。 あの女、持っているすべてのお金を私に払っていったのか? 信じられない考えが彼の頭をめぐった。

これまで20年以上生きてきたカー・グーが、そんな大胆な真似をする女に出会ったことはなかった。 金を残して去ったなんて!

あまりの怒りに、カーは 冷たい表情でアシスタントに電話をかけた。

「ホテルの支配人に監視カメラの映像を依頼しろ。 この部屋に昨夜いた女を探し出したい」

電話の向こうでは、アシスタントのこびへつらうような声が響く中、ふと枕の上にきらめく何かがカーの目に留まった。 小さなイヤリングだった。 これがあの女を探す手がかりだと分かって、カーは目を光らせた。

たちの悪い女だ、今度会ったらお仕置きしてやらなければ!

数年後、空港にて…

悪天候のために到着するはずの便は30分以上遅れた。 空港の待合所にいる人々の表情には焦りが見え始めた。 その中で、灰色のシャツを着た男だけは妙に落ち着きを見せていた。 金の縁取りのある眼鏡をかけて、優しそうなハンサムなルックスにその場にいたほとんどの人たちが注目していた。

あれ、バーロン・ファンじゃない? このハンサムな紳士は、A市で二番目に裕福なファングループの御曹司だとその場にいた女たちは気づき始めていた。 ファン家は、市内でグー家だけには劣っていた。 それでもまだ、ファン家は誰からも信じられないほどに裕福だったので、実際何ら問題があるとは思われていない。 「きゃあ! 彼って何てハンサムなのかしら!」 ひとりの女の子が小さい声で感情をこめていった。

バーロン・ファンが冷淡なカー・グーと比べたら、はるかに愛想の良い男であることは確かだった。

誰にだってこのバーロンに会えるなんて、滅多にないことだった。 これはチャンスと、彼に近づく女がいた。 何度もためらった末に、一人の女性はようやく勇気を出して彼の方へと歩き出した。 美しい女性だった。バレンチノのブランドの豪華なドレスを着ていた。 微笑みかけながら、その女性はバーロンに丁寧に自己紹介をした。

「ごきげんよう、 バーロン様。 お茶でもお付き合いいただけたら光栄ですが」

「おや、お美しい方からの招待を受けるとは幸運なことだ」

穏やかな笑みを浮かべて、バーロンはこう答えた。 「だが、すまん。 待っていた人が来てしまったようだ」

バーロンの指さしたほうを見ると、そこには、20代半ばの美女が歩いてきた。 長い髪が肩にかかり、顔にはメークをしていなかった。 白いシンプルなシャツにブルージーンズ、服もいたって清潔かつシンプルだった。 それだけシンプルだったにもかかわらず、大勢の中にいてもひとり際立って見えた。 それはニコールだった。

なぜか、彼女の持ち物は片手のバッグだけだった。 その彼女のかたわらに無邪気な幼い男の子が小さなスーツケースをひきながら、後ろをちょこまかと歩いてやってきた。

ニコールは、出てきてからすぐに羨ましそうな憎しみ溢れた視線をそれらの若い女性たちから向けられているのに気づいていた。 「また私のことを自分のバカげた盾扱いするなんて、もう男として失格だわ!」

心の中でバーロンに対する不満をさけびつつも、ニコールは優しいほほえみを浮かべて良妻賢母を演じていた。 彼女はバーロンの元へと歩み寄って、手をつなぎながら、優しい声で呼んだ。

「ハニー、かなり待った?」

バーロンもまた彼女に自然な感じで腕をまわして「ハニー」と呼んでいた。 バーロンのそばに来た幼い男の子もまた彼の足に絡みつき、甘えた声で彼を呼んだ。

「パパがいなかったから、ジェイ君さみしかった! 何でここで僕たちを待ってたの? パパの服に着いた香水はくさいよ!」

落胆した女性たちは、ぎこちない咳をしなたら去って行った。 満面の笑みを浮かべながらバーロンはジェイをスーツケースの上に座らせた。そして、スーツケースを片手で引っ張りながら、もう片方の手をニコールとつないで歩いていった。 車に乗るや否や、ニコールは彼の頬をきつくつねった。

「さっきのように、あなたをファンたちから守る盾としてのお役目はもう私は金輪際お断りしますからね!」

「頼むよ、ニコール! マンハッタンの旧友なんだろう。 それに、君のほかに誰が僕を助けられると思う?」

すると、バーロンは眉をあげ、ジェイの後ろに置いたスーツケースを見た。 「嘘だろう? 息子と二人で6年ぶりに帰国したっていうのに、君らの荷物はこれだけ?」

「ママは必要なものはこっちで買えばいいって。 効率のいい方法だって僕も思う」と、ジェイが言った。

「その通り。 いらない物は捨てる、そしたらエネルギーも場所も蓄えられる。 効率いいってことね」

息子に同意してニコールがそう言った。 しかし、隣のバーロンは不満しているようだった。

「ジェイはまだ6歳だぜ、おい。 頭の良い子だけど、そんなに冷たく教え込まなくても! バカな子ほど僕にはかわいい。ねえ、僕のかわいい息子ちゃん」 とバーロンはジェイの足をくすぐろうと手を伸ばしながら言った。

バーロンの手を嫌がるように、ジェイは短い両足を揺らしながら彼の手を押しのけた。そして、冷たい口調で言った。

「今は安全な場所だから、もうほかの女の子たちは来ないよ。 ファンおじさんの子のふりはしなくてもいいでしょ」

「まったく、ニコール・ニン! 君はいったい男の子をどう育ててるんだ?」

肩をすくめて、ニコールは微笑み、窓の外の懐かしい景色を眺めた。

マンハッタンへ出発した時、彼女はまだ18歳になったばかりだった。 ひとり暮らしで気が重かった。 しかし、あることが彼女の人生を変えた。 それは、7年前のたった一夜の出来事でジェイを身ごもってしまったことだった。 幸運にもバーロンと仲良くなったので、かなり助けられた。

時々あの夜を共にした男はどうしているかとニコールは思った。

ぼんやりとしか覚えていない顔だったが、ハンサムだったはずだ。 あの見知らぬ男に息子が出来たと伝えたら、彼はどんなにショックを受けるだろう!

こっちへ帰る前に、ニコールはジェイのことが心配になった。 ジェイは年齢の割に頭が良くて大人びた子供で、父親がいないことを受け入れていた。 だとしても、愛情をくれる父親がそばにいないのは不安だろう。 あの見知らぬ男をみつけて、彼がジェイのことを息子だと認めてくれたら、何も心配がいらないのだけれど。 でもあの男を見つけられなかったら、彼がほかの女性と結婚していたら、そしたらどうしよう?

ニコールはそう考えると、心配になって眉をひそめた。 ジェイは母親の気持ちを理解したかのように、安心させようと彼女の肩をたたいた。

「おバカなママ、悲しまないで。 お父さんがいたほうがいいかもしれないけど、 いなくてもいいんだ!」

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1 第1章ハンサムな見知らぬ男2 第2章帰国3 第3章七年ぶりの再会4 第4章彼に知られてはいけない5 第5章彼女と共に6 第6章見知らぬ女性が嫌だった7 第7章久しぶり8 第8章旧友との再会9 第9章よくも俺の部下に手を出したものだ!10 第10章ゆりかごで息の根を止める11 第11章バカママ12 第12章証拠は破棄し忘れないように13 第13章今度はまた何をやらかした14 第14章頭がいいのは僕のせい? 15 第15章父親と息子の出会い16 第16章俺に抱きつくのが好き 17 第17章彼の息子18 第18章お楽しみの時間19 第19章彼女じゃない20 第20章7年前の娘じゃない21 第21章罠なのか22 第22章俺の愛を独り占めしたいのか23 第23章三人家族24 第24章血を見るのと注射が苦手25 第25章父親になってもらいたい26 第26章命より大切な人27 第27章旧友の帰国28 第28章特別扱い29 第29章彼女の注意を呼び起こす30 第30章大胆にも彼は本当に入ってきた31 第31章あり得ないことはない32 第32章彼の言い分33 第33章新しい学校は気に入りましたか34 第34章ジェイは僕の息子だ35 第35章だから何? 36 第36章彼女との結婚を望む37 第37章親切なグーおじさん38 第38章良い評判の家柄39 第39章ジェイの寝言40 第40章お邪魔ならごめんなさい41 第41章あなたを軽蔑する42 第42章あなたとは関係ない43 第43章何もその事実を変えることはできない44 第44章ろくでなしが二人いる45 第45章俺の女になる運命だ46 第46章あなたじゃない誰か47 第47章彼を誤解していた48 第48章人間それとも、幽霊?49 第49章お嬢さん、あなたは誰50 第50章評判を落としたくない51 第51章選択肢はひとつ52 第52章話に乗るしかない53 第53章いざこざ54 第54章わざと55 第55章目を開けるな56 第56章口約束57 第57章腕に抱きたいのは君だけ58 第58章問題は解決した59 第59章なぜそんなに沢山の女がいるの60 第60章どうして夢を叶えないと言い切れる61 第61章彼女をトラブルに巻き込むな62 第62章食べ物を無駄にしてはいけない63 第63章成功を祈る64 第64章コントロール不能65 第65章ソウルメイト66 第66章私生児67 第67章父子鑑定68 第68章人魚は小さな池では生きられない69 第69章グー家の女主人70 第70章子どもの頃は僕とそっくり71 第71章なぜ服を着てないの72 第72章あなたの選択は私の選択73 第73章彼の腕の中74 第74章今晩、君を待っている75 第75章彼の謝罪を受け入れる76 第76章関わらないで77 第77章俺を好きだと正直に認めろ78 第78章ここから離れたい79 第79章エイブリーとの再会80 第80章犬が噛んだ痕81 第81章彼女だけの秘密82 第82章賭けようとしてるのか?83 第83章グー家の本家にて84 第84章心のままに85 第85章CapítuloRainyNight86 第86章Capítuloあなたのもののどこか87 第87章Capítulo良い話88 第88章CapítuloGoHome89 第89章Capítulo私は自分が間違っていることに気づきました90 第90章Capítulo彼女の夢から目を覚ます91 第91章Capítulo意味のないもの92 第92章Capítulo自動車事故93 第93章Capítuloジェイは元気になります94 第94章Capítulo輸血95 第95章Capítulo約束を守ります96 第96章Capítuloジェイは痛くない97 第97章Capítulo彼を押しのける98 第98章Capítulo別のスパイ99 第99章Capítulo入札イベント100 第100章Capítulo失神