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第6章見知らぬ女性が嫌だった
文字数:3149    |    更新日時:20/02/2021

ニコールは顔を上げると、ジャレドのまじめな表情にうなづいた。 深く考えなかったが、ジャレドの次の言葉がどうも気になっていた。

「今夜、ソグループとグーグループの社長たちの夕食会がございます。 午後6時に、運転手が下でニンディレクターを待っていますので」

ソグループの社長との夕食会であれば、グーグループの代表は彼女のような下っ端のディレクターだけであってはならないはず。 そう思って、ニコールはジャレドのまじめな顔を改めて見つめ返した。

彼女が何かを返事しようと口を開くよりも先に、ジャレドはさっさと踵を返して去ってしまった。

ニコールの事務所を出たジャレドは額ににじんだ汗をぬぐいながら、黒ぶちの眼鏡の下でおかしな表情をうかべていた。

5時50分に、グーグループの建物の中では、ニコールがトイレの鏡に映る自分の姿を確認していた。 彼女が着ていた黒のビジネススーツは、保守的だが端麗だった。

いわゆるキャリアを積んだ女性といういで立ちだった。 外見に満足したニコールは、鏡に映る自分に向かって自信あふれる笑顔を向けた。

駐車場についた瞬間に、グーグループの会社ロゴのある特別な黒いロールスロイスを見つけたので、彼女はさっそうと車へと向かった。

運転手はすぐに車から降りて、ニコールを迎え入れるため、後部座席のドアを開けた。 運転手にかるく会釈し、ありがとう、とニコールは車に乗り込んだ。

しかし、車の中に座っている男に気づいたニコールは、いきなり逃げ出したい思いにかられた。

「グー様 ?」

目を開けてニコールを確認することもなく、カーは鼻で軽く一息ついただけだった。

「うん」

ニコールがカーがジェイの父親だと気づいてから、直感的にカーをできる限り避けなければと思っていた。 そのような男性がジェイの父親としてふさわしいなどとは全く思えなかったのだ。

だからこそ、カーと共に時間を過ごすのは危険でしかないことだった。

ニコールは自分の呼吸を感じ取るほど緊張して、震えていた。 なるべく身を狭く縮こまって座り、後部座席のカーとは離れていようとしていた。

そして沈黙に満ちた車内の空気に、ニコールはいよいよぎこちなさを感じていた。 すると突然、沈黙を破るような彼女の携帯電話のベルが鳴った。

大慌てで電話を取り出すと、画面に表示された番号を見たニコールはショックを受けた。 それは、ジェイだった。彼女はすっかり今晩の夕食会のことを伝え忘れていたのだ。

「何時に帰ってくるの?」

ジェイは冷蔵庫の前にいて、バーロンが作ってくれた自分とニコール用の食事をみていた。 その姿はまるで大人のようだった。

「ごめん、ジェイ。 仕事でご飯を食べに帰ることができなくなっちゃったの。 ファンおじちゃんと一緒に食べてもらえるように電話をするから、待っててね。 いい?」

ジェイが年齢よりもしっかりしているのは分かっていたが、6歳児を一人で家にいさせるのは母親として不安だったのだ。

マンハッタンにいた頃も、ニコールは大学へ行く以外はジェイの面倒を見ていた。 でも今こちらに戻ってきてからは、ジェイとの時間があまり持てずにいた。

冷蔵庫を閉じて、ジェイは眉をひそめた。

「それはいいよ。 ファンおじさんっていつも子ども扱いするんだもの。 よほど家にひとりで留守番していた方がまし。 飲み過ぎないでね。 そして、寝る前には帰ってきてよ」

ニコールは面白い子だなと思いながら、彼のほうがより大人っぽく感じ始めていた。 自分が面倒をみるべきジェイが、逆に自分の心配をしてくれるのだから。

「分かった、頑張るわ」

会話に夢中になっていて、ニコールは自分の穏やかに話す口調をカーが関心を持って聞いているのには気づいていなかった。

ニコールの顔に笑顔がときどき見え隠れするのを見て、カーは少しぼうっとしていた。 母親らしい彼女の表情から、ニコールが電話の相手に対してどれほど愛情をかけているかがカーには十分すぎるほどわかったのだった。

「息子さんから?」

電話を切るとすぐに、カーが関心を持って聞いてきたので、ニコールは一瞬驚いた。

「はい」

カーはまた何かを質問したかったが、車がゴールデンクラブの前でとまった。

ここは、大変裕福かあるいは高貴な方々にしか出入りすることができないような場だった。 しかし、見た目が壮厳華麗であり、灯が明々とともっているところは、往々にして 誰もが知らない闇が隠れていた。 光あるところには闇がある、といったのは誰だっただろう?

運転手はすぐさまカーのために車のドアを開けた。 息子についてそれ以上カーが質問しないことに、ニコールはほっとしていた。 そして深呼吸をして車から降りると、カーの後を静かに歩いた。

ウェイターが彼らのためにドアを開けると、すでに部屋は人であふれていた。 しかし、カーを待ち続けていた人たちは誰もが決して口が裂けても文句などいったりはしない。

主賓席に座る前に、カーは参加者たちにそれぞれ短く挨拶をしていた。 離れた席にニコールが座ろうとしたその瞬間、突然カーは彼女の腕をつかんだ。

それで、ニコールはカーの右側の席に座らざるをえなかった。

こういう宴会では、必ず女性たちが集まってくるのを知っていたニコールは、結局カーの隣の席に座り、そういう女を彼に寄せつけない役目を担うこととなった。

「見知らぬ女性が近づかれるのが嫌なんだ」

目の隅の方でニコールにちらりと目をやると、カーはそういった。 彼は小さい声でささやいたのだが、ニコールになら聞こえるに違いないとわかっていた。

ニコールはカーを心の中で軽蔑しながらも、黙って彼に微笑みかけた。 もしも、彼が本当に見知らぬ女性が嫌だったのなら、7年前に自分が夜を共にしたのは幽霊か何か?

しかし、ニコールは自分の中にその事実をそっとしまっておいた。

自分が7年前のその女性だったことをカーに知られてはいけない。

間もなくクラブのマネージャーが個室に明るいスーツ姿の女性のグループを招き入れた。 その部屋の中にいる人々は黙り込み、カーが何かいうだろうと期待の目を彼に向けた。

革の椅子にゆったりと座ったカーは、ニコールの座る椅子の背に腕を置いた。 それが何を意味するかは明らかだった。

「どうぞお好きなように」

その言葉を合図に、部屋の中の人々はとなりに座らせる女性を一人ずつ選んだ。

ただ、カーの左側に座っていたソグループ社長のジェレミー・ソはひとりも女性を選ばなかった。 その代わりに、彼は興味深く、カーのとなりに座るニコールをみただけだった。

カーよりも若干ジェレミーの方が年上だった。 グーグループと比べて劣るソグループだったが、ジェレミーはその後継者である。 かつて、カーは同様の夕食会に女性をつれて来ていた。

しかし、今日彼がそばに置いている女性は、以前の人とはちがって、彼のガールフレンドに見えなかった。

「ソさん、 どなたかそばに置く女性を選ばなくていいの」

ジェレミーの視線をたどってみると、その先にはニコールがいるのにカーは気がついた。

「彼女は私のもので、誰かほかの人が簡単に連れ去るような真似をさせるものか」と言わんばかりのカーの顔。

ジェレミーは知的な男で、カーの言葉の中が含む脅威を決して見逃さなかった。 彼は恥ずかしそうに笑って、指を鳴らしてマネージャーを呼んだ。

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1 第1章ハンサムな見知らぬ男2 第2章帰国3 第3章七年ぶりの再会4 第4章彼に知られてはいけない5 第5章彼女と共に6 第6章見知らぬ女性が嫌だった7 第7章久しぶり8 第8章旧友との再会9 第9章よくも俺の部下に手を出したものだ!10 第10章ゆりかごで息の根を止める11 第11章バカママ12 第12章証拠は破棄し忘れないように13 第13章今度はまた何をやらかした14 第14章頭がいいのは僕のせい? 15 第15章父親と息子の出会い16 第16章俺に抱きつくのが好き 17 第17章彼の息子18 第18章お楽しみの時間19 第19章彼女じゃない20 第20章7年前の娘じゃない21 第21章罠なのか22 第22章俺の愛を独り占めしたいのか23 第23章三人家族24 第24章血を見るのと注射が苦手25 第25章父親になってもらいたい26 第26章命より大切な人27 第27章旧友の帰国28 第28章特別扱い29 第29章彼女の注意を呼び起こす30 第30章大胆にも彼は本当に入ってきた31 第31章あり得ないことはない32 第32章彼の言い分33 第33章新しい学校は気に入りましたか34 第34章ジェイは僕の息子だ35 第35章だから何? 36 第36章彼女との結婚を望む37 第37章親切なグーおじさん38 第38章良い評判の家柄39 第39章ジェイの寝言40 第40章お邪魔ならごめんなさい41 第41章あなたを軽蔑する42 第42章あなたとは関係ない43 第43章何もその事実を変えることはできない44 第44章ろくでなしが二人いる45 第45章俺の女になる運命だ46 第46章あなたじゃない誰か47 第47章彼を誤解していた48 第48章人間それとも、幽霊?49 第49章お嬢さん、あなたは誰50 第50章評判を落としたくない51 第51章選択肢はひとつ52 第52章話に乗るしかない53 第53章いざこざ54 第54章わざと55 第55章目を開けるな56 第56章口約束57 第57章腕に抱きたいのは君だけ58 第58章問題は解決した59 第59章なぜそんなに沢山の女がいるの60 第60章どうして夢を叶えないと言い切れる61 第61章彼女をトラブルに巻き込むな62 第62章食べ物を無駄にしてはいけない63 第63章成功を祈る64 第64章コントロール不能65 第65章ソウルメイト66 第66章私生児67 第67章父子鑑定68 第68章人魚は小さな池では生きられない69 第69章グー家の女主人70 第70章子どもの頃は僕とそっくり71 第71章なぜ服を着てないの72 第72章あなたの選択は私の選択73 第73章彼の腕の中74 第74章今晩、君を待っている75 第75章彼の謝罪を受け入れる76 第76章関わらないで77 第77章俺を好きだと正直に認めろ78 第78章ここから離れたい79 第79章エイブリーとの再会80 第80章犬が噛んだ痕81 第81章彼女だけの秘密82 第82章賭けようとしてるのか?83 第83章グー家の本家にて84 第84章心のままに85 第85章CapítuloRainyNight86 第86章Capítuloあなたのもののどこか87 第87章Capítulo良い話88 第88章CapítuloGoHome89 第89章Capítulo私は自分が間違っていることに気づきました90 第90章Capítulo彼女の夢から目を覚ます91 第91章Capítulo意味のないもの92 第92章Capítulo自動車事故93 第93章Capítuloジェイは元気になります94 第94章Capítulo輸血95 第95章Capítulo約束を守ります96 第96章Capítuloジェイは痛くない97 第97章Capítulo彼を押しのける98 第98章Capítulo別のスパイ99 第99章Capítulo入札イベント100 第100章Capítulo失神