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第15章父親と息子の出会い
文字数:5217    |    更新日時:08/04/2021

カーは無言のまま、その場を去った。 彼は無表情だったので、何を考えているのかは分かりようがなかった。 車のところまで来ると、すぐに乗りこみ、考えるより先にエンジンをかけた。 リバーサイドガーデンまで車を走らせ、ニコールのためにグーグループが用意した家に向かった。

その建物のそばまで来ると、カーはエンジンを停止させずに振動音が響く中で、車の窓を開けた。 エンジンが刻むリズムを聞くと心が少し落ち着いたからだ。 そして車の中に乗ったままで、庭のあたりに小さな男の子が静かに座っているのを見つけた。

その子はだいたい5歳か、6歳くらいだった。 髪は綺麗に切りそろえられて、少し大きめの白いTシャツと膝までの黒いズボンを身に着けていた。 木製のベンチにその子は座って、ルービック・キューブの玩具を手に持って遊んでいるようだった。 その子はカーの視線には気がついていなかった。

エンジンを止めて車からそっと降りたカーは、その少年へと向かって歩いて行った。 そして、その男の子が玩具に集中する様子を見つめていた。

ふと、ジェイはいつもとは違う目線を感じた。 そこで、ルービック・キューブから目を離すと、目の前の男の人を見上げた。

ジェイはまだ6歳だったけれども、その大人の男性には何だか強い力を感じた。 彼が放つオーラは注目を集めた。 何となく、ほんの少しだったが、ジェイは自分が彼への親近感をもっていたと思った。

ジェイは子どもっぽい挨拶をして、それからまたルービック・キューブを始めた。 遊んでいるのを見られていることも別に気にしていないようだった。 彼には人にずっと見ていくように思わせる魔法を持っているようだった。

「君ならもっと速くできるはずだ」

とても上手にやれていることがカーには見て取れた。

「ルービック・キューブやれるんですか?」

ジェイは急いで手元の玩具をカーに渡して、やって見せて欲しいという表情を浮かべた。

カーは少し前かがみになると、玩具を男の子の手から受け取った。 そして、そのキューブをなんと1分もかからないうちに揃えたのだ。

「おじさん、すごいかっこいい!」

それほど誰かを尊敬するなんてことは滅多になかったので、ジェイはその気持ちをほとんど忘れていた。 また玩具を小さな手の中に持たされると、彼の目はカーへの憧れの気持ちでいっぱいになった。

カーは無表情のままだったが、ジェイの柔らかい髪に手を伸ばして触れようとした。 その行動はもはや本能的だった。とてもコントロールできたものではなかった。 そして、もしカーは自分を制することができたとしても、相変わらず触れていただろう。

その瞬間だった。カーが何かを考えていたところへ、馴染みのある声がした。 立っているところからそう遠くない場所から聞こえていた。

「ジェイ! お昼よ!」

ニコールはくるぶしまで届く長い白いサテンのワンピースをシンプルに着こなしていた。 まっすぐの黒髪は長く、肩のラインに沿って揺れていた。 カーは声のしたほうへと目を向けると、そよ風に彼は軽快な気分になった。

「おじさん、一緒にお昼を食べないか? そうなったら、僕はとっても嬉しいんだけど! 食べ終わったら、ルービック・キューブの方法を教えて欲しいんだ」

ジェイはニコールにもう一度よばれたので、ベンチからジャンプして地面に降りた。 そしてカーの右手を小さな手でつかんだまま、彼女の立っている方向に向いて叫んだ。

「ママ、 僕はここにいるよ!」 ジェイは母親がなんとも言えない可愛らしい目をくりくりさせて自分を探しているので、そうやって声をかけたのだった。

そのジェイの言葉に、カーは驚き、唖然とした。 まさかニコールが以前話していた息子だとは、気づいていなかった。 確かに、その男の子の表情には親しみが感じられたが、すぐにはそれが誰だかは分からなかった。

「お昼ご飯の時間よ」 あなたの好物の煮魚を作ったから食べよう」と、ニコールはジェイの声がしたほうへと歩きながら話していた。 すると、息子のそばにいた人を見て驚いた。ジェイの遊んでいたベンチのそばには背の高い大きな木があったので、その人は初めは隠れていたのだ。 「え、あの… グー様? ここで何をされていらっしゃるの?」 と彼女はしどろもどろになって言った。

ジェイがカーと一緒に立つ姿を見て、ニコールの顔からは笑顔が消えた。 さらに、ジェイの小さな左手が、カーの手を握っているのが見えて、ニコールの心臓は驚いて一瞬止まったかと思った。

「たまたま通りがかったものでね」

カーは姿勢を正し、いつもの落ち着いた眼差しでニコールを見ようとしたが、心はパニック状態になっていた。

「ママ、おじさんを知ってるんだね? すごいんだよ。 ルービック・キューブを素早く完成した! 一緒にお昼食べませんかって、誘ったんだ!」

ジェイは母親のそばまで急いでかけていって、太もものあたりで彼女をしっかりと抱きしめた。 その顔は、新しいお友だちができた喜びでいっぱいになっていた。 それに、母親を見つめる彼の目も無邪気に輝いていた。

「ジェイ、おじさんの時間をむだにしちゃいけないわ。 とてもお忙しい方なのよ」

ニコールは自分の太もも辺りにしっかりとつかんだジェイの手に腕を伸ばそうとした。 明らかに冷たく厳しい声色だったのだが、それにはジェイは気がつかなかった。あるいは気づいていたけど無視していた。

「実は今日は暇なんだ」

低くはハスキーな声で、カーはニコールに向かって言った。 「ジェイの誘いをもう受けたよ」と言わんばかりにまっすぐ彼女の目を見て答えた。

ニコールが何か彼を警戒していることに気がついた。 彼女の身体は緊張してみえて、 その目は不安そうだったのだ。

「わーい! グーおじさん、僕たちとご飯を一緒にたべられるんだって!」

ジェイはカーが言った言葉に大喜びだった。 ニコールの太ももから手を離すと、両腕を伸ばしてカーの方へと向けると、子どもが遊んだり、抱っこして欲しいときにするような動作をしてみせた。 彼は本当に嬉しそうに笑っていた。

カーは力強い腕を片方、ジェイの方に向けて差し出した。 そして、ジェイをひょいと持ち上げて、しっかりとした筋肉のある腕に座るように抱えた。 そのままカーが建物へ歩くと、ジェイは歓声をあげていた。 ニコールはその二人の姿を見て足を止めていた。 目の前で何が起きているのだろうと、全く予期してもいなかった出来事に、唖然としてしまっていた。

カーが歩くので、ジェイはカーの首に手を回してバランスをとっていた。 そしてカーに頼んでニコールを待ってもらった。なぜなら、ドアのところまで行った時に、ニコールが開けてくれると思ったからだった。

ニコールは二人に追いつこうとして、ふと自分が無意識に微笑んでいることに気がついた。 そして、玄関先で二人が立ち止まって待っているのを見た時、彼女はいつもの表情に戻っていった。 カーに笑顔を見せないでおこうと思ったのだった。 思った通り、彼女がドアのところまで来ると、カーは少しだけ彼女の方を見た。 それを無視して、ニコールは静かに玄関のドアにある暗証番号を押した。すると、ロックは自動的に解除された。 そして、ドアノブをゆっくりと回して、カーとその腕の上に座っている息子を通した。

それかれ、彼女はすぐにキッチンに行って、器と箸を用意してもってきた。 彼女が戻ると、二人が洗面所からこっちへ来るのを見た。 大人の男と、小さな男の子。

あまりにもよく似ていた。 まるで大人の男性をそのまま小さくしたような少年だった。 喉の奥に何かつかえたように感じて、彼女は呼吸が激しくなって、思わず音がするほど息をのんだ。

カーはニコールに向かって正面にそして、ジェイはカーの横に座った。 ジェイは一生懸命にそして静かに昼ご飯を食べていた。

ニコールは不安と緊張が入り混じっていた。 カーの前で食事をするのが、ぎこちなかったからだ

「プレゼントは何が欲しいのかな?」

箸を置くと、カーはジェイの方を向いてさっきと同じようなハスキーな声で尋ねた。

「ルービック・キューブで戦いをしようよ。 まだ僕には競争相手になるようなスゴイ友だちがいないから。 グーおじさんと遊ぶ時間が欲しい」とジェイは答えた。

そのカーへの返事をしている時のジェイの目はキラキラと輝いていた。 話を終わると、少し黙ってからまた昼ご飯を食べ続けた。

「たった、それだけ?」

ジェイの方を見ながら、カーは満足気にそう言った。 それまでは一切子どもと過ごすことはなかったカーの声には何か自信に満ちた響きがあった。

ジェイは何も言わずにうなずいただけだった。 そして食事をしながらも、口元は笑っていた。

「よし、食後に遊ぼう。 でもその前にしっかり食べて準備をしておいたほうがいい。 結構厳しい試合になると思うから」

そういいながら、カーは魚を一つ取って、骨を取り除くと、ジェイに食べさせた。 話している間にニコールがそうしているのを見て、今度は自分の番だとカーも真似をしたのだった。

「分かった、準備するよ!」

ジェイは食事をしながらも、とても嬉しそうだった。 目の前のグーおじさんとの激しい戦いと、その楽しい遊び時間に期待でいっぱいになっていた。

ジェイの言葉を聞いて、ニコールはあまりにびっくりして思わず箸を落として器をひっくり返しそうになったほどだった。

親子の縁は切っても切れないというけれど? 目の前で起きている事実を説明できるような論理的思考は、今の彼女には皆無であった。

カーはふと目線を上げて、ニコールと目を合わせた。 二人はしばらくの間、瞬きもせず見つめ合っていた。 カーは何も言わなかったが、ニコールは彼の眼差しに今まで見たこともない感情を垣間見たのだと感じた。

「グーおじさん、それほど立派だと、やっぱり嫌がられる?」

ジェイはカーに向かって軽く首をかしげて見せた。 そう質問を投げかけたジェイの表情はどうみても無邪気だった。 カーへの尊敬の気持ちから、何を質問しても彼はきっと答えを持っているだろうと信じて疑わなかったのだ。

「賢さは非常に重要ではあるけれども、それは慎重さが要求されるんだ。 豊かな人生を引き寄せてくれる一方で、気をつけないと困難な出来事が沢山起きる。 だが、多くの場合には賢さというものは、決して悪いものではないんだよ」

そう答えたカーの声は、ジェイの質問に対する苛立ちを感じさせなかった。 ジェイにとって大変分かりやすい言葉が使われていたし、それにとても真剣さのこもった声だった。 カーがゆっくりと話すように気をつけていたので、ジェイは言葉を一つも逃さずにしっかりと理解することができた。

「でも学校のクラスには、僕の友だちになろうっていう子はいない。 隣に座ってくれる子もいない。 だから、1年生にいるのが間違いだと思うの」

ジェイのことをカーは長い間見つめていた。 子どもの頃の自分をそのまま目の前のジェイに見るようで、それはカーの心をしっかりと捉えていた。 カーは優秀な子どもが一人ぼっちのような孤独を感じることを知っていた。 すると、彼は携帯電話を手に取ると、さっさとメッセージを送信した。 そして、メッセージを送る様子を伺っていたニコールに向かってこう言った。

「月曜日の朝、この子を私が学校に連れて行く。 才能は無駄にするな。 あの学校ではこの子には物足りないんだ」

ニコールがどれほどジェイを愛していたか彼には分かっていたが、ジェイの能力や才能に最適な学校選びができていなかった。

「わあ! グーおじさん、ありがとう!」

ジェイはカーの方へと向いて大喜びした。 そして自分の部屋に行って、数分後に戻ってきた。 その手にはとても大切そうに模型の飛行機を持っていた。

「グーおじさん、これあげる。 他の学校を探してくれて本当に感謝しているんだ」 そういうと、ジェイはとてもまぶしい笑顔を浮かべていながら、 カーに向かって模型飛行機を差し出した。 彼の無邪気な顔はとても嬉しそうで、そしてほっとした表情を浮かべていた。

「僕が自分で作ったの。 ファンおじさんがいつも欲しがっているが、でもあげずにとっておいたんだ。 グーおじさん、受け取ってもらえないか」

大事な親友の証として宝物を授ける時のように、ジェイはカーに模型飛行機を贈っていたのだった。 彼をじっと見つめて、その模型飛行機を褒めてくれるだろうかと案じていた。

カーは模型飛行機をゆっくりと、さまざまな角度から確認していた。 「悪くない。 とても良く出来た模型飛行機だ。 それにとても丁寧だ」 その模型飛行機の細部を入念に確認しながら、カーは囁くようにそう言った。

確かに、その模型飛行機は6歳の子どもが作ったとは思えないほど精巧に作られていた。 非常に細かくて複雑な作りだったのだ。

「グーおじさん、ルービック・キューブで遊ぼう。 約束だったよね!」

ジェイはカーの手をとって、自分の部屋に連れて行った。

二人を見守っていたニコールは気持ちの半分は、 行くのを止めなくてはと思いながらも、それでももう半分は静かに何も言うまいと思っていた。

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