替え玉の花嫁
作者羽間 里絵子
ジャンル恋愛
替え玉の花嫁
彼らが鍋料理店に到着したとき、もう個室に空きがなかった。 それを知って、難しい顔をしているサム・リンに対して、オータムは窓際の席に歩いて行った。
彼女は個室に入らない方がいいと思って、 この窓際の席でとてもリラックスしていた。
「どうぞ、かけてください」 彼女は二人を見て、かすかに言った。
「ねえイボンヌ、他のレストランにしない?」 サムが個室を取れず困っている様子をみて、クリスが提案した。
しかしオータムは、サムがどう思って居るのかなど気にかけず、メニューに顔をうずめていた。 「いいえ、ここでいいわ。私、後で予定があるから、軽く食べればいいの」
「どうぞ掛けて」 サムはクリスのために椅子を引き、彼自身はテーブルの反対側に座った。
オータムは料理を注文する時にさらに顔を下げると、 彼女の顔にレストランの照明がかかり、彼女をさらに美しく見せていた。
その鍋料理屋はかなり混んでいたが、彼女は落ち着き、静かにしており、 ただ黙ってそこに座っているだけで、 人を安心させる力を持っているようだ。