替え玉の花嫁
作者羽間 里絵子
ジャンル恋愛
替え玉の花嫁
テーブルの上は手を付けられていない料理でいっぱいだった。 クリスは、食べ物を無駄にすべきではないと思っていた。
しかし、サムは「もう十分だ。 さぁ、行こう。 帰国したばかりだから、やる事が沢山あるんだ。 先に君を送っていくよ。 後でビデオ会議があるんだ」と財布を手に取りながら、クリスに言った。
そして、返答を待たずに会計カウンターに行って支払いを済ませ、ドアの所でクリスを待っていた。
この鍋料理屋は客が多くとても賑やかな店だったが、 サムは群衆の中の輝く星のようで、 クリスは彼を簡単に見つける事ができ、安心した。
彼ともっと二人きりで過ごしたかった。
「どこに住んでいるんだ?」 車に乗り込んだ後、サムはクリスに「道を教えてくれないか? 長い間海外に居たから 場所を言われても、道がわからない」と言った。
「わかったわ」クリスは笑顔で答えた。 帰りの道中、彼女はサムに道を教える以外殆ど話さなかったし、 サムもあまり話さなかった。
クリスは、イェとサムが一緒に育ち、彼はイェの事をとても気にしているのが気に入らなかった。